第2章 5話 村はずれの森で⑤

「拝みたいなー。きれいだろうな。月色の王子さま」


「月色……?」


「ミシュアーナ王子さまのことよ。髪かそれはそれは美しい月の色なの。月色の王子って愛称よ」


 月色の人。本当に優夜先輩のことみたいだ。


「もし出逢えたら、どうなるのかな。ねえ、ユナなら見初められるかも……」


 エスミナは途中で言葉を止め、期待を込めた目でゆん菜を見る。


「ユナだったらあり得るかも。だって霊力強いし、宮廷聖女候補だし、村一番にかわいいし」


 エスミナは目を輝かせる。


「がんばってみてよ。この村からお妃さまが出るなんて、世紀の瞬間よっ」


 ゆん菜はくらくらした。


 妃……。

 恐ろしすぎて言葉がない。


 エスミナは本当に刺激が好きだ。


「わたしはいい。エスミナがんばりなよ」


 なんで、わたしなのよと、エスミナは目を見開く。


「わたしみたいな平民じゃ無理に決まってるでしょ。おかしくなったと思われて、わらいものになるわよっ」


「わたしだって、無理だよ」


 だいじょうぶと、エスミナは夢見るような目をする。


「だって宮廷聖女候補だよ、ユナ。歴代のお妃様の中にはね、宮廷聖女さまもいるのよ」


 本当に目眩がしてきた。

 ゆん菜は地面にすわり込む。メイメイがゆん菜の頭を撫でた。

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