第1章 33話 水辺に映る炎④
「優夜先輩……」
ゆん菜は思わず駆け出して、優夜の横に立つ。
優夜はゆん菜がいることに気づいていなかったのだろう。心底驚いた表情をした。
うまく言葉が見つからない。ゆん菜は顔を赤くしてうつむいた。
彼はゆん菜をずっと見つめていた。もたれるようにゆん菜の肩に額を乗せる。ゆっくりと目を閉じた。
「どうしたの? 優夜先輩」
訊いてもなにも答えない。ゆん菜は彼を支えるようにただじっとしていた。
顔を上げると、はちみつ色の月があった。涙が出そうだった。
「……ごめんな」
やがて、優夜はかすれた声でつぶやく。
「ごめんな。異世界の暮らしはつらいよな? ゆん菜を護れないのに、こんなところに呼んだりして」
ゆん菜は息を飲む。彼がそんな風に考えていたとは思わなかった。
「そんなこと絶対ないよ」
「……う族に生まれて、俺はこの国で強い力を持てて。ゆん菜を護れると思ったんだ。でも間違いだった」
……族?
「わたしは優夜先輩にまた会えて、すごくすごく幸せだったよ」
異世界での、優夜との再会を想い出される。本当に泣きたいくらい幸せだったんだ。
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