第1章 32話 水辺に映る炎③

 夜の闇に包まれて、優夜は月を見つめている。


 落ち着いたやわらかな視線だ。だが、どこか悲しげだった。


 ずっと月を見ていた優夜は、やがて庭の西の池の前に行った。


 水辺の上に霊力で火を起こす。


 水面にゆらゆらとオレンジ色の明かりが映った。


 暖かく周りを照らす炎なのに、なぜか寂しくて悲しい。


 やがて、優夜は地面に置いていた紙を手に取る。


 なにかの論文のように、長い文章が書かれていた。繊細な字は優夜のものだ。


 望書、そんな文字が見えた。


 望み書きと読むのだろうか。なんのための文書だろう。


 優夜は紙の端を持ち、一歩進む。紙に霊力で火をつけた。


 紙は優夜の霊力で宙に浮く。ゆっくりと燃え上がり、はらはらと池に落ちていった。


 それを見つめる優夜の瞳から涙が落ちた。

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