第1章 31話 水辺に映る炎②

 それに、優夜が外に行くことはほとんどない。彼はいつも家にいるのだ。


 絵を描き、それを売って生活しているからだ。


 召喚者であるゆん菜と暮らすため、なるべく目立たないようにしている。


 昼間の怪我も疲れた様子も、よく考えたらふしぎだ。いつも家にいる優夜は、あんな風に疲れる生活はしていない。怪我だってしにくい環境だ


 なんか、変。


 よく考えたら、家には転移の霊石がある。行こうと思えば、どこの町でも簡単に行けるのだ。


 出掛けた形跡がなくても、外に行っていたのかもしれない。


 ゆん菜は外套を抱えて、優夜を追った。


 夜の薄暗い廊下の角を曲がる。優夜が玄関のドアを閉めるのが見えた。


 声をかけようとして、言葉を飲む。


 優夜は普段は見せないような、曇った表情をしていたからだ。

 長いまつ毛が瞳に影を作る。


 ゆん菜は早足で後を追った。


 外は冷えた風が流れていた。虫の歌が響いている。

 優夜は庭の南側に立っていた。差し込む月の光の中にいる。月色の髪が輝いていた。

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