第1章 30話 水辺に映る炎①

 辺りには静かな藍色の闇が広がっていた。冷えた空気が漂っている。


 あれ……。

 なにかの物音に気づき、ゆん菜は目を覚ます。


 辺りはまっくらで、ゆん菜はベットの中にいた。眠っていたから、今の時間は分からない。

 だが、寝付いてからそんなに時間は経ってない気がする。今は真夜中だろう。


 なんの音だろう。


 不安になるが、よく考えると物音は優夜の部屋のほうからだ。きっと優夜が立てた音だろう。


 廊下に出ると、ちょうど優夜が玄関のドアを開けるところだった。

 彼は薄着でいた。外の寒さに身を震わす。まだ疲れがとれていないのかもしれない。

 うつむき加減で、瞳に影が落ちた。


 追おうとしたゆん菜は、外套を持っていこうと優夜の部屋に引き返した。


 一応、ノックしてから彼の部屋のドアを開ける。


 あれ……?


 部屋に入ったゆん菜は思わず辺りを見回す。


 室内はやけに整っていて、人がいた気配が薄かった。


 シーツはきれいに伸ばされていて、優夜がベットに入った形跡はない。

 夜着も枕元に置いたままだった。


 夜、優夜とはおやすみの挨拶を済ませた。


 なのに彼は眠らなかったらしい。鞄が机の上に置いてあった。どこかに行っていたようだ。


 だが、なぜゆん菜にいわなかったんだろう。

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