第1章 22話 霊力の訓練①

「次、マリーユナ。いらっしゃい」


 庭のほうから声がかかった。


 ゆん菜の実技の番だ。ゆん菜は立ちあがって、庭の真ん中にいたシスターの前に歩み寄る。


「準備はいいですか?」


 ゆん菜がうなずくと、シスターは霊力を放つ。目の前の空間に、小さな炎が浮かんだ。


 今日の訓練は、シスターが出した炎を消すというものだ。


 ゆん菜はどうやって消そうか迷う。


 霊力で水をかければ簡単だが、技を多く見せたほうが成績が上がるのだ。


 ゆん菜は霊力を集中させる。


 空にかざした手のひらの上に水が集まり始める。りんご一個分くらいの水が溜まった。


 その水を霧のようにして風を起こす。水粒が辺りに散らばって、光を放った。


 水分を含んだ風で火を弱め、その後、炎の上から雨を降らせる。

 更に炎は弱まった。


 落ちた雨で、空中に水溜りができる。最後はその青い水溜りの中に炎を沈め、火は完全に消えた。


 エスミナが拍手をくれた。他の生徒からも感嘆の声があがる。


「さすがですね。すごいですよ。マリーユナ」


 シスターは優しい目をする。朝のシスターと違い、年配の穏やかなシスターだ。


「では、後半の授業ではマリーユナは集会室へ」


 頬を緩めてシスターは告げる。


 教会の中にある集会室は上級者が行く部屋だ。神父さまが教えてくれる。

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