第1章 21話 第一王子ミシュアーナ②

 ミシュアーナはムーナサリア国の第一王子だ。


 とても有能な上に、誠実で優しいらしい。そして見事な金色の髪をした、美しい王子だという。


 ……優夜と同じ月色の髪だ。


 エスミナはうっとりと頬を染めていた。彼の話をするとき、村の少女たちは大抵こうなる。


 だが、いくら人気があってもゆん菜にとっては恐怖の対象だ。温和だと評判でも、召喚者に優しいわけはない。


 王家には、乱暴者だと評判のわるい第二王子もいる。ダークブラウンの髪に碧眼で、ハルヴィンという名だ。


 噂だけでゆん菜を震えあがらせるこの兄弟が、ゆん菜は一番苦手だった。


「ねえ、メイメイはどう思う?」


 メイメイはゆん菜のひざの上で震えていた。ゆん菜の恐怖を感じているらしい。

 もし今、ミシュアーナが近くにいたら襲いかかるだろう。だが、攻撃対象がいないときのメイメイは、小動物のまま震えることが多い。


「ユナが宮廷聖女だよ。すごいよね?」


 メイメイはじっとゆん菜を見つめた。肩に登ってきてゆん菜の頭を撫でる。


 エスミナを見ると、悲しそうに首を振った。そんなメイメイに、エスミナは目を細めた。


「メイメイもユナを慰めるんだね。かわいいね」


 かわいいといわれ、メイメイはキュンと鳴いて喜んだ。

 それから、期待のこもった目をゆん菜に向けた。褒めてもらいたいのだ。


「ありがとう、メイメイ。元気出てきたよ」


 ゆん菜はメイメイを撫でる。

 メイメイの瞳はきらきら輝いた。

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