第1章 20話 第一王子ミシュアーナ①

「長い説教だったね、ユナ」


 教会の建物の前で、ゆん菜とエスミナは庭の隅にすわっていた。


 庭の真ん中には、一人の生徒とシスターがいる。他の生徒は二人をぐるっと囲んですわっている。

 生徒が霊力ん放つ。今は霊力の実技の授業だ。ゆん菜の大好きな時間だった。


「『宮廷聖女を目指しませんか? 私は反対ですけど』だったんだね。なんか、わらえる話ね」

 

 ゆん菜のとなりにすわるエスミナは口元を抑える。


 どうしてこの友達は、なにを聞いてもわらうだろう。


「ねえ、そろそろ慰めて」


 ああ、ごめんねと、エスミナはゆん菜の肩を叩く。


「『反対ですけどね』はひどいよね。ユナなら聖女はぴったりだよ。しかもお城務めなんて、すっごく素敵」


 お城という言葉に、心臓が縮みあがる。


 だが、わたしは召喚者だから王族が怖いですとはいえない。


「でもさ、わたしみたいな凡人が、お城で働くなんて無理だよ」


 とりあえず、そういってごまかす。


「でも、お城だよ、お城。みんなの憧れなんだよ。お城には、……ミシュアーナ王子もいるし」


 王子?!


 ミシュアーナという名に、ゆん菜はまた悪寒が走った。

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