第1章 16話 宮廷聖女と召喚術①

「か、関心はあります。すごく」


「そうですか。それはよかった。では目指してみますか? あなたの霊力なら充分可能性はあると思うのです」


 シスターは紙に視線を落とした。


「今度、見習い聖女の募集があるのです。もし、あなたにやる気があるのなら、わが教会からあなたを推薦しようと思うのですが」


 推薦? 本当に?


 いつもゆん菜を叱っているシスターの言葉とは思えない。

 だが教会で、ゆん菜はゆん菜なりに努力したのだ。それが認められたんだろうかと、笑みがこぼれる。


「まあ、これは神父さまの意見で……」


 シスターはぴくぴく眉を動かした。優しげだった表情が豹変した。


「私はかなり不安なのですけどね。霊力が強いといっても、あなたのような未熟な人間が聖女などと……」


 やっぱり……。

 この厳しいシスターが、わたしを褒めるわけがない。


 それに未熟って……。 


 ゆん菜は気を取り直して顔をあげた。シスターに歩み寄る。召喚術のためだ。

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