第1章 15話 守護獣メイメイ⑤

 シスターはしばらくもどってこなかった。


 待ちくたびれて、ゆん菜が花壇の煉瓦にすわったとき、シスターの声がした。


「召喚獣はどうしたのです?」


「制御しました。わたしのお腹のポケットで眠ってます」


 本当は制御ではないが、つい自慢してしまう。


「そうなのですか? 褒めておきましょう。では、今回のことでは反省文を提出なさい。それから、この募集要項を見てください」


 いいながら、シスターは持っていた紙をゆん菜に差し出した。


 え? せい、じょ……?


 ゆん菜は目を凝らす。紙に書かれたという文字にどきっとする。確かに、……聖女と書かれていた。


 ……聖女募集。聖女って、あの聖女?


「マリーユナ。あなた、聖女に関心はありますか?」


 シスターの言葉にもう一度どきりとする。


 聖女とはこの異世界では、霊力で教会や社会に貢献する女性を指す言葉だ。国の少女はみな、聖女に憧れている。


 実は、ゆん菜もずっと憧れていた。

 ゆん菜が身につけたい召喚術を行うのは主に聖女だからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る