第1章 10話 ゆん菜の苦手なこと③

「どうして、そう乱暴なのです もっと、堪えることを覚えなさい」


 シスターの声はびりぴりと肌に刺さった。


 彼女は持っていた指し棒を握る。


 授業で黒板を指すときに使う物だが、彼女はそれで机などを叩くことがある。


 ゆん菜の全身は干物の如く縮みあがった。


 すると、ゆん菜の背後から、凍るような気配がが流れてきた。


 ゆん菜の後ろに、影のように控えていたメイメイのものだ。ゆん菜の恐怖に反応したのだ。


 守護獣、……メイメイは立ち上がる。

 シスターのほうに一歩、足を踏み出した。


 今のメイメイはリス似の小さな姿ではない。


 青い目に白い毛並みの、狼のような獣になっている。しなやかな体をしている。ゆん菜を守護するときの姿だ。


「だから、守護獣を使っての暴力はやめなさい」


「メ……、メイメイ。だめだよ」


 ボールを破壊したときのように、守護獣はシスターに牙を剥いた。


 だが、シスターは動じずに意志の強い視線をメイメイに返した。


 メイメイの瞳に怒りが浮かぶ。

 今にも飛びかかりそうな体勢で、シスターと睨み合った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る