第1章 8話 ゆん菜の苦手なこと①

「おはようっ」


 広い道に出たところで、後ろから元気いっぱいの声がした。


「あ、エスミナ。おはようっ」


 エスミナは学校で唯一の同い年だ。肩までの髪を器用に丸め、アップにしている。


「今日のワンピースかわいいね」


「ありがとう。エスミナの髪の編み方、毎日違ってすごいよね」


 家々が並ぶ道を抜けると、景色は菜園に変わる。教会所有の菜園だ。


 教会の中庭では、小学生くらいの子どもがボール遊びをしていた。


「お姉ちゃん、危ないっ!」


 ふいに、声が響いた。ゆん菜は体を強張らせて身構える。


 ボールがゆん菜の頭を目掛けて飛んできたからた。


 悲鳴があがる。


 ゆん菜はぎゅっと目をつむり、それでもボールを受け止めた。


 ……つもりだった。

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