第1章 6話 家の外は怖いけど③

 ケホケホは、いつまでたっても止まらない。


「ゆ、ゆん菜……」


 優夜があわてたように駆け寄り。背中をさする。


「無理はしなくていいんだよ、ゆん菜」

 優夜の青い瞳に、暗い影がよぎる。


「ゆん菜はずっと家にいていいから」


 ……じゃあ、ここにいる。


 いいたくなるのをゆん菜は堪える。


 本当はものすごく怖い。でも、勉強だ大事だ。ゆん菜はもう一度気合いを入れた。


 それに怖いのは自警団だけだ。


 学校のみんなは優しい。


 学校といっても、ゆん菜が通っているのは教会だ。ゆん菜が住む村は小さいため学校がない。子どもは皆、シスターたちから教育を受けている。


 場所が教会ということもあって安らげる。不安を忘れることもある。


 だから、きっとだいじょうぶ。優夜先輩との新しい生活。きっとうまくやって行ける。

 

 ゆん菜は笑顔で優夜を振り返った。

 彼の不安を消したかった。


「わたしね、全然だいじょうぶだと思うんだ。だって優夜先輩がいるんだから。わたしと先輩が揃えば最強なの。なににも負けないの」


 優夜は頬を緩め、くすくすわらう。ゆん菜の頭に手を乗せた。


「じゃあ、なにかあったら脱兎の如く逃げること。腕輪の使い方は覚えたよね? 家の中に空間移動してくれば、あとはだいじょうぶだからね」


 優夜が建てたこの家には、身を護る仕掛けがたくさん施されているとのことだった。


 仕掛けられている霊石が作動して扉が開かなくなったり、他者を家の外に弾き出したりするらしい。

 なんだか、魔法の家のようだった。


 優夜からもらった腕輪に霊力を注ぐと、避難部屋に空間移動もできた。

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