第1章 5話 家の外は怖いけど②

「じゃあ、行ってきます」


 玄関の前で、ゆん菜は優夜を振り返る。


「準備がまだだよ、ゆん菜」


 優夜はゆん菜の頭に、髪飾りをつけてくれた。ゆん菜のワンピースの色と同じ、水色の髪飾りだ。


 薄い水色で、ゆん菜の今の髪に似合う。異世界では、ゆん菜は髪色も変わっていた。桜色が入ったブロンドだ。


 ワンピースは無地で、裾にマーガレットに似た花の刺繍がしてある。

 異世界の服は簡素なものが多い。作りもシンプルだ。

 少女たちは皆、このワンピースのような服を着ていた。


「似合うよ、ゆん菜」


「ありがとう……」


 異世界での優夜は、前にも増して器用だ。

 髪のことだけでなく、裁縫から大工仕事までなんでもやってのける。


 異世界の生活に慣れているのだ。

 交通事故の後、優夜はこの国に転生した。ゆん菜と違って召喚者ではない。


 だから、いつもゆん菜をリードしてくれる。


 元々大人びていた彼だけど、もっと頼もしくなった。


「わたしも早く優夜先輩に追いつくね」


 そのためには、まず勉強をがんばらないといけない。


 本当は行きたくない。


 もし召喚者だとばれたら、自警団に捕らえられて投獄だ。


 人として扱われなくなり、最後は森の奥に追放される。


 ゆん菜は気合いを入れて、玄関に向き直る。

 ドアを見た途端、どきっとする。負けるものかと大きく深呼吸をした途端に、むせ返ってしまった。

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