第1章 2話 異世界の小さな家②

 朝日が差し込むリビングで、ゆん菜はソファに深くもたれる。


 窓の外には異世界の風景が広がっている。


 中世ヨーロッパのような野山の風景だ。

 緑の山々と草原。遠くには海も見える。窓の外を、ひとつ、ふたつと綿毛が飛んで行った。


 ゆん菜たちが住むムーナサリア国には、花咲かせたあと、綿毛になる植物が多い。


 木の花でも綿毛になるものがある。大きな木にまんまるの綿毛がたくさんつく様子は、本当にふしぎできれいだ。


「優夜先輩、あれなんて鳥?」


 家の前の小道に、白い小鳥が舞い降りた。

 ゆん菜は窓際に駆け寄る。物音に驚いて、小鳥はすぐ逃げた。


「ごめん、よく見えなかった」


「ねえ、見て。草原が風で揺れてるよ。波みたいたできれいだね」


「ゆん菜はなに見ても喜ぶね」


 優夜は目を細めてわらった。


「うん。異世界って自然がいっぱいで、空気がきれいで、大好きだよ」


 ゆん菜はソファの背に頭を乗せた。


 優夜と過ごす朝は、静かな優しさであふれている。


 ふいに、ドアのほうで音がした。カリカリとドアを引っ掻く音だ。


「あっ、メイメイ、起きたのかな」


 メイメイとは、ゆん菜の守護獣だ。優夜が契約してくれた。


 今までは、優夜の部屋で眠っていた。メイメイはその日の気分で、ゆん菜か優夜の好きなほうと一緒に眠る。


 ドアを開けると、メイメイは目をきらきらさせて、キュウンと鳴いた。

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