第一章 ゆん菜の願いと異世界生活

第1章 1話 異世界の小さな家①

 暖かな部屋、差し込んでくる桜色の光。


 ゆん菜は優しさに包まれて、目を覚ました。


 ベッドサイドには、大きなのわんこのぬいぐるみがある。

 部屋をぐるっと見回すと、桜色の花模様のカーテン、白地のマーガレットの壁紙。煉瓦の暖炉。


 みんな優夜が用意してくれたものだ。彼が用意してくれた小さな家、可愛らしい部屋。


 ぽかぽかの心で、ゆん菜はベッドを転がる。


 幸せ……。


 寝転んだまま、壁にかけられている絵画を眺める。


 異世界に来て、優夜と初めてのデートで行った海の絵だ。優夜が描いてくれた。半年くらい前のことだ。


 異世界のきれいすぎる海で初デート……。


 想い出すと体までぽかぽかしてきた。


 こうやって、朝、絵を眺めると、心の底から幸せを感じる。優夜と離れていたときの悲しみは、もうあまり思い出すことはない。


 ベッドから降りて着替え、部屋を出る。


「おはよう、優夜先輩」


 途中にある優夜の部屋のドアに向かって声をかけた。


「おはよう、ゆん菜」


 白い木製のドアが開き、優夜が顔を出す。月色の長い髪が陽射しを受けて透きとおった。


 いつも、ゆん菜を見つめてくれる優しい瞳。

 ゆん菜も精一杯の笑顔を返した。

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