プロローグ 2話

 でも、いつ逢えるの? 優夜先輩。


 あれから一年だよ。わたし、待つのに疲れたよ。


 ゆん菜は笑顔をつくってみる。

 だが、体がついていかない。


 足元がぐらぐら揺れて、ポプラの幹にしがみついた。


 なぜか、意識が薄れはじめる。周りの空間に現実感がなくなった。


 ……もしかして、わたしは消えるんだろうか。

 でも、このままでいれば、優夜先輩がいる場所に行けるかもしれない。

 いろんなことが終わるんだ。


 ゆん菜は瞳を閉じた。


 ふいに、辺りが光に包まれた。揺れが強くなる。弱った気持ちのせいでなく、本当に地面が揺れていると分かった。


 なにかおかしい。


 思っても、逃げる気力が湧かない。ゆん菜はポプラにもたれるように身を預けた。


 瞼を閉じていても、まばゆいばかりの光を感じたた。涙があふれた。


「優夜先輩……」


 笑顔でつぶやいてみる。


「ゆん菜……」


 なぜか、応えるような声がした。光の中で、誰かが確かにゆん菜を呼んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る