シーサイド・ゴーストタウン

玖柳龍華

第1話

ようやくあの人の元へ行ける。

断頭台に固定される時の気持ちは存外楽なものだった。


眼前には死刑を、斬首を、見に来た民衆がいる。ずらずらと。

悪趣味な暇人どもが。


こいつらを満足させるために死ぬでやるんじゃない。

散れ。いや、むしろお前らも似たような目に会えばいい。


そんな恨み事がふつふつと湧いてくる。

だがそれ以上に。


あの人もこんな目に晒されて逝ったんだろうか。


そう思うと何も浮かばなくなる。

あの人をそんな目に合わせないために自分がいたはずなのに。


足元から死が這い上がってこようと不思議と静寂なのはそれがあるからだ。


役目も使命も何も果たせなかった自分はさっさと死ねばいい。

その願望がようやく果たされる。


だからこの現状に苦言は何もない。分相応の待遇だ。

それでも強いての懇願が許されるのであれば、せめて地獄には行かせてほしい。




だが、その日。首が落ちることはなかった。


代わりにその広場の上空に飛竜が一匹飛来した。




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