第5話 ステータス
純白の光に支配されていた視界がはれると、俺は木々が鬱蒼とした森の中にいた。
辺り一面が木に囲まれ、前後左右どこを見ても目に入ってくる情報は、『木』のみだ。
知らない世界で急にこんな理不尽な扱いを受け、元クラスメイト達は誰も助けてくれず、俺は復讐心で気が狂いそうに... は、ならなかった。
やっぱりなんにも動揺しないな。なんでだろう...?普通の人間ならこんな扱いを受けたら、「この野郎!!」ってなるはずなんだが...。
あ、そういえば俺普通の人間じゃなかったわ。魔族だったわ。
なんだ魔族って!!!自分が魔族になったなんて信じられるかー!!
・・・ふぅ、とりあえず、もう一度しっかり自分のステータス確認したいな。
どうやってやるんだ?・・・もしや!あのお約束のセリフを言えばいいのか...?
一度は言ってみたかったんだよね♪ なんて心躍らせながら俺はあのセリフを呟く。
「ステータスオープン」
・・・・・・
何も起こらないんかい。ワクワクしてた俺の気持ちを返しやがれ。
いや、よく考えたらデュランは俺のことを『鑑定』してたよな?
てことは、自分に『鑑定』すればいいってことか?
でもさっきデュランに鑑定してもらったときは俺のステータスに鑑定スキルなんて存在しなかった気がするんだよな...。多分使えないよな...。
まあでも、何事も試してみなきゃわからん!!
ええい!やけくそだ!
「鑑定!!」
《 スキル『鑑定』を獲得しました 》
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名前:飛山 恭弥
種族:魔族
言霊:独
称号:異世界人 特異存在
能力:天涯孤独 如意自在 鑑定
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目の前にステータスプレートが浮かび上がってきた。
え? 鑑定できたんだけど?
ていうか、今頭の中でスキル獲得がどーのこーのって流れた気がするんだけど?
なに? 今鑑定スキルを手に入れたってこと? いやわけわからんぞ。
あと、ステータスに漢字が多すぎて一目見ただけじゃ全くわからないんだが。
もっと詳しく見れないかな?
俺はまず、能力の部分のが気になったため、そこの解説プリーズ! と鑑定スキ ルに念じる。
すると、それぞれの能力の解説が浮かび上がってきた。
めちゃめちゃ融通が利くなこの鑑定スキル。
ユニークスキル 『天涯孤独』:孤独を感じている時間に応じて基礎能力を上昇させる。
ユニークスキル 『如意自在』:自分の思い通りにスキルを獲得、改変することができる。ただし、スキル名は漢字に限定されます。
創造スキル 『鑑定』:対象のステータスを看破する。
なんか思ったよりも詳しく見ることができたな。
ユニークってことは、このスキルは俺だけのスキルってことか...? なんかかっけえ...!
そんなことより、なんだよ『天涯孤独』って!!
効果はめちゃめちゃ優秀かもしれんが、なんだ? 俺を煽ってきてるのか!?
そうさ...。前世でも孤独に生きてきたってのに、異世界に来てまでも俺は孤独になったよ!!
事実を突きつけてくるんじゃねえユニークスキルさんよぉ...。
ふぅ、切り替えて次のスキルを見ていこう。
この、『如意自在』ってスキルは訳が分からないくらいにチートだな。
俺の思い通りにスキルが獲得できて、さらに改変までできるだと? やべえなこのスキル。
このスキルのおかげか? さっき鑑定スキルが手に入ったのは。
スキル名は漢字に限定ってのはよくわらんな。もしや、あれか? 前世で俺が漢字検定一級を持っていたことが関係してるのか? (前世の俺は正真正銘の馬鹿だったが、なぜか漢字だけは異次元に優秀だったのだ)
まあ漢字に限定されたところで、大した影響はないだろう。
あ、だからステータスオープンでは反応しなかったのか。なるほど勉強になります。
あとは、『鑑定』ね。
まあこれは説明不要だな。
創造スキルってことはやっぱり俺が『如意自在』で作り出したってことなのだろう。
興味津々に自分のステータスを眺めていると、気が付けば日は沈み、辺りは真っ暗になっていた。
これだけ真っ暗になってるってのにそれに気付かねえって、どんだけステータスに夢中だったんだよ俺...。
みなさんお忘れかもしれないが、俺は今、右も左もわからない異世界で木々が鬱蒼とした森の中で独りなのだ。これ、結構ピンチじゃね?
久我がこの世界は戦いにあふれた世界だー、みたいなこと言ってなかったっけ?
てことは、魔獣やら魔物やら、人間と戦いが起きるような生き物がいるってことだよな?
しかもここは森の奥深くだぜ?? これをピンチと言わず何と言おうか。
俺はどうにか夜を越せそうな安全な場所がないか辺りを見回してみたが、当然のごとく周りには木しかなかった。
これは木に登るしかなさそうだな、と思い、木の上に人ひとりが過ごせそうなスペースのある木を見つけ、そこで一夜を過ごすことにした。
前世では木登りなんてのはしたことがなかったが、今なら余裕で登れる気がしたので、木の上で一夜を過ごすことにそこまで迷いはなかった。こうする以外に選択肢はないだろうしな。
俺は、人間離れした軽い身のこなしで木の上に登り、寝るスペースを整え横になった。
明らかに俺の身体能力がおかしなことになっている気がしたが、「まあ俺魔族だしな」とあっさり片付け、今日はいろいろありすぎて疲れていたのだろう、すぐさま眠りについた。
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