第36話

 本日三回目の敵艦載機による空襲。マリーンマンは空母マーズの艦橋で対空戦闘及び敵弾回避のために矢継ぎ早に命令を繰り出していた。現状、幸いにして彼の乗艦に敵機は群がって来てはいない。


 視界の右端に閃光が走る。


 「二時方向、戦艦グローリー第二砲塔付近に被弾!」


 見れば戦艦グローリーの船体を黒煙が隠している。加えて砲身があり得ない仰角を向いている。砲塔に直撃か至近弾のようだ。だが大丈夫、あれくらいなら戦艦はそう簡単に沈みはしない。


 「八時方向、空母キャリアー被雷!」


 「何……」


 マリーンマンが見た瞬間、キャリアーの奥に水柱が立った。さらに被雷したのだ。キャリアーはここに来るまでに損害を被っている空母の内の一隻だ。沈むかもしれない。


 「あ……」


 見ている前でさらにもう一本、水柱が屹立した。短時間の内に三本の被雷。キャリアーが見てわかるほどの早さで傾き始めた。吃水線下の船体が姿を表す。あの早さで沈んでは大半の乗組員は退艦などできはしない。


 波が引くように敵機が去り、艦隊は被害の確認、復旧や処置に追われ始めた。そんな中、急報が入る。


 「レーダーに艦!敵艦隊です!」


 空襲後の艦隊陣形が乱れた隙を突くように敵艦隊が突入してきた。


「クソ……こんな状況で……!」


 帝国軍新鋭戦艦フューリアスの艦橋で艦長、マッドはうめく。いや、こんな状況だから来たのだ。レーダーに映るのは敵艦隊。空襲後の艦隊陣形が乱れたところへ突入してくるのだから戦艦を中心とした殴り込みと見て間違い無い。


 急ぎ防空用の輪形陣から砲撃戦のための陣形へと変更しろとの命令が下るがどう考えたって陣形が整う前に敵艦隊は来る。ともかくマッドは敵艦隊の鼻っ面を叩くために艦敵艦隊へ向け艦を移動させる。


 周囲は混乱状態で、とにかく空母は後方へ、戦艦、巡洋艦、駆逐艦は敵艦隊へと向かうように動いていた。


 先に発砲したのは国防海軍の新鋭戦艦だった。全長約2m、重量1460kgの砲弾が初速780m/秒


発達した砲とレーダー照準器の組み合わせにより40,000mの遥か彼方から全長約2m、重量1460kgの砲弾が初速780m/秒で飛んで来るとフューリアスの前方に着弾し、巨大な水柱を出現させた。

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