第24話 損害の程度

 「酷いな」


 包帯を頭に巻いたマリーンマンは艦橋から飛行甲板を見ながら呟いた。


 目下、火災の消化は終わり飛行甲板の復旧に全力を挙げている。


 しかし本来なら即刻回航すべき損害である。飛行甲板には大穴が開いたし、格納甲板内は全て消し飛んでしまった。兵器を載せておく台車や燃料ポンプなどを失ったため艦載機への補給、修理は不可能になった。


 また、魚雷の命中は深刻な浸水を引き起こしていた。一部は排水ができず、これによる傾斜に対処するため注排水装置を使用した結果、艦はさらに重くなった。


 さらに人員の損耗も深刻だった。航空要因も含めて3000人を超える乗組員がいたのだが1/3程が戦死傷、行方不明になっていた。この場合、行方不明というのは遺体が確認できない程までに吹き飛ばされたり、海に落とされたり、或いは浸水した区画に閉じ込められていたりである。まあ、浸水区画に閉じ込められている者は死んだ者である。


 余談だがこうした遺体は艦がドックに入った後、区画の排水と一緒に出てくる。のだが海水にふやけて非常にグロテスクになる。これの悲惨なところは死体を見慣れていないドックの工員がいきなりグロテスクな死体と対面してしまうところにある。


 総じて言えば空母ではなく巨大な船となっていた。


 それでも艦隊に留まり続けるのは、応急修理を行えば航空機の発着艦は可能なことから、一度に発艦させられる航空機の数を確保するためである。海上において航空機を発進させられるのは(水上機なんかは除いて)空母だけだからだ。


 そういう訳で空母マーズは応急修理を加えつつ、スリン島への航海を続けていた。

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