第20話 航空偵察

 スリン島西方海域 高度約7000m。


 「どう見ても……もっといるよな?」


 国防軍最新鋭戦略爆撃機、鋭山の偵察型機の中で偵察員が相方に同意を求めるように言った。


 「うん……。700、いや800隻くらいいそうだな」


 彼らの眼下には見渡すかぎりの帝国軍艦隊があった。


 以前潜水艦からあった報告のおよそ倍だが、潜水艦は水平方向から見たこと、そして夜間だったため仕方のないことである。そも、所在を明らかにしただけで結構な戦果である。


 帝国軍艦隊は空母、戦艦共に四隻を含むが約7割が補給船などの非戦闘艦で構成されている。これはそもそもより近代になるにつれ戦闘要員より補給段列の方がより大勢必要になること、加えて凄まじい損害が予想されているためかなり余裕を持たせているからである。また、スリン島に展開している部隊を連れ帰るのだからその分の食料も積んでいる。


 既に国防海軍潜水艦の襲撃によって60隻近くが沈んだが、まだまだ作戦に支障は出ていない。


 「ん?なんだあれ?……客船?」


 艦隊の中に一隻、空母に並ぶほど大きく、またやけに複雑な形をした船があった。


 「え、どれ?」


 「ほら、あれ」


 「あー……。豪華客船じゃないか?大勢を運ぶには最適だな」


 「なるほど」


 二人が話している中に機長が割って入った。


 「写真は撮り終えたか?」


 「ええ、終わっています」


 「お、敵艦隊直掩機四機、昇ってきます」


 「了解、離脱する」


 鋭山は機首を反転させると上昇し始めた。鋭山は高度100,000m超を悠々と飛行できる性能を有している。帝国軍は未だその高度帯で満足いく性能を持つ機体を有していないから、この場合高度を上げる方が有効だった。

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