第13話 救援拒止

 シュタイナ少佐の副官、ヨーネス大尉は耳を澄ませていた。


 M/4戦車とトラックの出すエンジン音が近づいていた。けっこうな速度で移動しているのがわかる。実際、帝国軍救援部隊(戦車四両、歩兵一個中隊規模)は司令部の火急を救わんとかなり速度を出していた。


 やがて救援部隊が緩やかな曲がり道までもうすぐという時。先頭の戦車の下で爆発が起こった。散々帝国軍の車列が喰らったのと同じ奇襲である。爆薬を戦車の下で起爆したのだ。


 燃料タンクが破壊され、火の着いた燃料が車内に流れ出すと炎が乗員を絡め取った。火にまとわれた乗員は絶叫を上げ、体中を掻きむしるように悶えながら戦車から脱出し地面に転がり落ちた。


 ヨーネス小隊は前夜、空中投下によって得ていたファウストなどの重火器をふんだんに使うことができた。


 隊列の左側、木陰から狙いを澄ました攻撃が開始された。隊列は停止していたのだから格好の的である。戦車に対しては二人一組みで弾薬庫か燃料タンクを撃ち抜いた。


 一度発射した後は発射の際に発生するバックブラスト目掛けて反撃されるのを避けるため移動し、再度攻撃する。


 手当たり次第に戦車、トラック目掛けて発射する。乗員が逃げられないまま被弾したトラックはドライバー、人員約10を乗せたまま爆発、炎上した。


 とにかく、初撃を免れた兵士達はトラックから大慌てで飛び降り、そして機関銃の射線に躍り出た。


 曲がり道の茂み、隊列から見て進行方向にはヨーネス分隊の機関銃手が配置されていた。毎秒20発の猛射が帝国兵を襲う。


 十時砲火に晒された帝国兵はトラックを盾に応戦しようとしたか、とにかく道沿いの茂みに逃げ込もうとしたかに問わず、両者とも撃たれることになる。さらに車列と茂みとの間がそんなになかったことによって被害はさらに増えた。なんせ機関銃は銃身を小さく左右に振るだけで敵をその射線上に納めることができたのだから。


 十字砲火を浴びせられていると気づいて帝国兵は伏せて応戦し始めたが、そこを手榴弾が襲った。


 ヨーネス分隊の面々は自身らが離脱後、帝国軍部隊がまたトラックを使用して救援に駆けつけないようにトラックに向け手榴弾を投げた。直接手榴弾の爆発に巻き込まれなくても、トラックの誘爆に巻き込まれたり、或いは破片が飛んでき巻き添えにされた。


 一通り襲撃を終えたヨーネス分隊の面々は帝国軍部隊が統制を取り戻して反撃してこない内に離脱した。襲撃の最中にランド少将殺害成功との無線連絡を受け取っていたため集合場所へ向け移動する。もしまだ目的が達成されていない場合は次の奇襲場所で再び救援部隊を待ち受ける予定だった。


 一方の救援部隊は未だ混乱から立ち直っておらず、まだ銃を闇雲に撃っていたり、やっと手榴弾の存在を思い出して投擲したりしていた。


 3分に満たない戦闘にも関わらず、帝国軍の被害は甚大だった。戦車とトラックは全て破壊され、人員も約3分の2を失っていた。それでも混乱を収めた後は徒歩で救援に向かったが既に意味を失っていたのは言うまでもない。


 ヨーネス分隊も一人被弾したが自分で歩けた。


 この後両分隊は合流し、行きと同じ複葉機で悠々と戦場から離脱した。

 

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