なぞの警護対象
お昼になり警護対象の下へ行くと、相手は十二歳くらいの少女だ。
ローブで顔を隠しているがわずかに綺麗な金髪が見え、肌は色白く、妙に堂々としている。
「俺がジャンでこっちのメイドがサーシャだ」
「メイド? どこにいるの?」
「いや、俺の隣に……」
ジャンが隣を見るとすでにサーシャの姿はなかった。
「わぁ~この馬車すご~い! 頑丈なのに軽いやつですよ!」
「おいサーシャ! 自己紹介しろ!」
サーシャは少女の目の前までいき元気よく挨拶した。
「旅人メイドのサーシャです。よろしくお願いします!」
「旅人メイド……? まぁいいわ。私はアルレリア。警護はしっかり頼むわね」
「もちろんですよっ」
と、意気揚々と返事をしたが、いざ出発するとひどいくらいサーシャは寄り道をしたり止まったりする。警護対象のアルレリアは馬車の中に乗っているため最初こそわかっていなかったが、サーシャがどこかへ行くたびに前を守り馬に乗っているジャンが叫ぶものだから、だんだんとアルレリアも心配になっていた。
「本当にこの二人でいいのかしら……」
地味にサーシャの馬の扱いは上手く、メイドとは思えない技術をもっている。
いったん休憩をしていると、その技術に興味が湧いたジャンは尋ねてみた。
「ここに来る前なんか怖そうな人たちと一緒にいたんですけど、その時に馬の扱いおしえてもらったんです」
「何日くらい教わったんだ? そんな簡単に身につくもんじゃないだろ」
「えーっと、七日間くらいですね」
ジャンは驚愕した。七日間で馬に乗れる程度には上手くなることは当然ある。とはいえそれは移動する分には困らないという程度。それでも驚愕のが早さだが、サーシャはなんと七日間で容易に走らせたり止まらせたり、しかも馬にストレスをかけない扱いにたけている。
「お前、ハンターに向いてるのかもな」
「でも、ジャンさんのほうがすごいですよ。だって、静かに離れたつもりがすぐばれちゃうんですもん」
二人の会話を聞いていたアルレリアもジャンの反応の早さには驚いていた。
パーティでクエストを行う場合、複数人で行動を共にするため後方確認の担当がいたりする。その中で剣士は前衛を担う花形だ。そのため、剣士という立場は戦闘時にはまるで後ろにも目がついているような実力を持ち合わせている。
しかし、それは緊張感が伴う戦闘中であり、警護でしかも後ろに人を配置し警戒心の必要のない長閑な道で後ろを見ずに音だけでサーシャの行動をジャンは理解していたのだ。
「だー! もう! 変な草持ってくんな!」
「これ食べれるんですよ!」
しかし、あまりにもかみ合わない二人。
そんな二人を見てアルレリアは再び不安を感じていた。
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