第14話:第2の地獄の始まり

 体育教師の説教を聞き流し、担任のため息に迎えられながら教室に入ると、数人の男子生徒が駆け寄ってきた。


 俺たちのところまで来ると、俺と川口の肩に手をまわし、強引に引っ張ってきた。


 岡本の机までくると、そのうちの一人はニヤニヤしながら小声で話しかけてきた。


「おいおい、あれはどういうことだ?」

「は?何が」

「分かるだろ。倉石と巫部だよ」

「ああー…」


 まあ、訊かれるとは思ったけど、本当に訊かれるとは。


 もう少し遠慮してほしいんだが。


「俺は特にないからパスで。川口よろしく」

「あ、おい!」

「いやいや、ないことはねぇだろ?もう諦めて吐いちまえよ」

「いや本当にないんだが…」


 そう呟きながら沙織のほうをチラリと見る。


 巫部となにやら話しているようだ。


 あいつらも、いつの間にか仲良くなってる。巫部、すげぇな。


 そんなことをぼんやりと考えていると、沙織がこっちを見た。


 一瞬、目が合う。


 だが、バッと目を逸らされてしまった。


「…な?見てたろ?俺、あいつに嫌われてるみてぇだし、何もねぇって」

「…前から思ってたけど、お前マジで鈍いな」

「「お前が言うなよ川口。この川口が。だから川口なんだぞ」」

「声をそろえて罵倒するなよ!川口は悪口じゃねぇ!は〇まんか!?」

「そんなツッコミ初めて聞いたわ。何だよそのオタクにしか分からんし、超分かりづらいツッコミは」

「いや分かるんかい」


 当たり前だろ。俺としては、なんであのツッコミが思いついたのか気になるんだが。


「あんな妹がいたらなぁ~」

「お前妹居るだろうが」

「今絶賛反抗期中だがな」

「いいじゃんか。可愛い妹だろ」

「どこがだよ。俺最近口きいてねぇぞ。この間なんかボロクソ言われたしな」

「兄に対してだけだろ」

「ま、別にいいけど。どうせ嫌われてんだ。ここでどうこうしたって変わんねえよ」

「…お前本当に川口だな」

「おい!?」


 言いながら川口の妹を思い浮かべる。


 確か…中2だったか?


 いい子だと思うけどな。あの子が悪口言うところ、あまり想像できない。


 でも、ボロクソ言うってことは、言い返されたり怒られたりしないって分かってるってことだと思うけどな。


 それだけ信頼しているってことだろ。なんでそれが分かんないのかねぇ。


「で、結局どうなんだ?川口」

「あ、そろそろ授業始まるぞ。席つけよ」

「…あとで洗いざらい吐いてもらうからな」

刑事デカかよ」


 結局、休み時間になる度に俺たちは追及されたのだった。


 



 


 そして、時は経ち。


 運命の体育祭が、始まる。









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