第12話:異なるものは惹かれ合う
やっと放課後が来た。
今日はいろんなことがあったなー。
でもまさか学級裁判まで起こるとは。
学級裁判って…初めてじゃない?
結局最初に先生が言い渡した一か月の停学処分ということで落ち着いたけど。
それにしても今日は、弘毅のいろんな表情を見れたな。
そう思い、ちらっと隣を歩く弘毅を見ると、視線に気づいた弘毅がこっちを向いた。
「ん?どうかした?」
「べ、べつに何でもないわよ!」
あぁ~!またやっちゃった~!
早く治ってくれないかな、コレ…。
「いや、でも…」
「?」
この3日間を思い返してみる。
真剣な顔。悪そうな顔。そして…怒った顔。
それを思うだけで、生天目さんのこともどうでもよくなってきた。
「…弘毅のいろんな顔を見れたから、案外よかったのかも」
「!…よかったな」
「うん。…え?」
まさか、声に出てた?
頬が紅潮するのが分かった。
「や、やっぱ今のなし!早く記憶を抹消して!」
「は!?いや、無茶言うな…物理的はマジでやめろ!?」
思わず拳(なぜかポケットに入ってた石を添えて)を振り上げた私を見て、大袈裟に弘毅は避けた。
いやアンタ、私より強いでしょ。
…あれ?弘毅って私より強いのかな?
よく考えたら、私弘毅が本気になったところ見たことないな。どうせさっき怒ったのも、そこまで
あれ?あの告白って、本気だったのかな。
でも、確か「最初からわかってた」って…フラれるってわかってたってことだよね?
じゃあ、何でしたんだろう。…というか、なんで今まで疑問に思わなかったんだろう。
普通に考えればわかったのに。弘毅は、誰かに告白するような人間じゃないって。
訊いてみようかな。でも、思い出したくないかもしれないし、まあいいか。
「そういえばさ」
「ん?」
「…体育祭、いつだっけ?」
「なに言ってんの。再来週の月曜日じゃない。もう忘れたの?」
「…」
「…?」
なぜか弘毅は立ちどまって下を向いてしまった。しかも震えている。
体調が悪いのかな、と思った私は、顔を覗き込もうとして、
「いやだああああああああああ!!!!!!」
「きゃ…!」
「あ、わり」
いきなり顔を上げた弘毅とぶつかりそうになり、尻餅をついてしまった。
「あ、わり」じゃねぇよ。誠心誠意謝んなさいよ!
「どうしたの?急に」
「体育祭が嫌すぎて発狂しただけだ。大丈夫、大丈夫」
「全然大丈夫じゃないから。精神科連れていかれるレベルで異常だから」
周りの人も「コイツ頭大丈夫か?」みたいな視線で見てくる。…すいません大丈夫じゃないです。
「何がそんなに嫌なのよ?私は結構楽しみだけど」
「何がそんなに楽しみなのよ?私はかな~り嫌だけど」
「あ?」
「すいません俺が悪かったもう二度と真似しないからその顔引っ込めて普通に怖い。お前目当てでついてきてたやつらが逃げてってるから。それどころか通行人まで逃げてってるから。俺のとは別の恐怖感じちゃってるから」
いいことじゃん。というか、ついてきてることに気付いてたなら言ってよ。
「本当に何が嫌なのよ?」
「本当に何が楽しみなのよ?…いや、これマジ。真似じゃない」
「あ、そう。…普通に楽しいじゃない、体育祭」
「俺には理解できねぇわ。ただの地獄じゃん。運動するってだけでもきついのに」
「そう~?」
私にはそっちが理解できないけど。
「じゃ、練習頑張って。じゃあね」
「おう。また明日」
そう言って別れる。
体育祭、か。
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