第6話:それツンデレだなあ!

 やっちゃった。


 やっちゃったよ。


 どうすりゃいいのよ、こっから!?


 この服嫌いじゃないかなとか、なんて声かけようかなとか考えてて、肩を叩かれ思わず変な声が出てしまい。


 そのせいで視線を集めてしまい、恥ずかしさから逃げ出して。


 いつの間にか知らないところに来ていて。スマホも落として。


 30分くらい後に弘毅が汗だくで私のところに走ってきた時は、心臓が爆音を鳴らし、顔を見れなくて。


 仕舞いには私らしからぬ言動をしてしまった。あれじゃあ、まるで私がツンデレみたいじゃないの!


 べ、別に、弘毅のこと好きって訳じゃないからね!?…はっ!


 ち、違うからね!?


 そっからも結局アイツの顔は見れなくて。


 アイツに服を褒められたときは、うずくまってしまい、また突き放すようなことを言ってしまった。


 せっかく、服を褒めてもらえたのに。人生で初めて、弘毅に服を褒めてもらえたのに。


 お父さんの誕生日プレゼントを選ぶのを手伝ってもらう、という口実を作っていたのが台無しだ。


 そんなこんなで、今私たちは喫茶店にいるんだけど。


 …やっぱり、何を話せばいいかわかんないや。

 

 ああ、私、何やってんだろう。


 自分で始めたことなのに。弘毅を巻き込んで。弘毅を振り回して。これじゃあただの、自分勝手な女じゃない。


 と、そこで、弘毅が口を開いた。


「…別に、気にする必要ないんじゃないか?」

「え?」

「俺は勝手に巻き込まれてるだけだし、振り回されてるだけ。お前が気にする必要ねぇって言ってんの」

「…っ」


 …何で、分かるのよ?私の悩み事が、そんなに的確に。


「いやだって、分かりやすいし」

「………」


 …私って、そんなにわかりやすいかなぁ?


「で、そろそろ話してもらおうか」

「え?何を…」

「何のために俺は呼ばれたのかってこと」

「ああ」


 そういやそうだった。まだ、話してなかったっけ。


「実は、今度お父さんの誕生日で、一緒にプレゼントを考えようと…」

「ふ~ん。で、それは何の口実だ?」

「…え?」


 なんで、そこまで…


 さすがに私もそこまでわかりやすくはない…はず。


「いやだって、お前毎年、1人で買ってるじゃん」

「あ…」


 そういえば、そうだった。


 盲点だった…。


 というか、なんで知ってるんだろう。


「で、本来の目的はなんだ?」

「そ、それは…」


 言えない。いえるわけがない。


 ただ会いたかったからなんて、口が裂けても言えるわけない…!


 いつまでも沈黙する私を見て、弘毅はため息を一つ。


「しょうがねえなぁ」

「…?」

「じゃあ、付き合ってやるよ。お前のお父さんへの誕生日プレゼント考えるの」


 そう言って、コーヒーを口に含む。


 やっぱり、優しいなあ。しかも、私が何を言って欲しいのかを察して言ってくれる。私はこんなに配慮できない。


 もう、目的達成しちゃったよ。まあ、あの顔は見れなかったけれど。


 それは別の機会に。



 …いや、別に好きではないからね!?

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