第17話 トーナメント⑧ 勝ち筋は「創造」するもの

はあ、、、

ああはいったものの、今の俺があいつに勝つには、相当特殊な手を使いでもしないと無理。(殺しアリなら脳みそぶちまけ余裕なんだけどなぁ。)

まずは相手の力量を図り、自分のどの武器が効果的なのか確かめる必要がある。

(力量については、2発食らえばグロッキー。3発で確定でおしまいってことは読めてるがな。)

そのためには、少々リスクを―――


「策略謀略それらは無力♪楽々攻略お前の能力♪!」

「チぃ!」


猛スピードで突撃してくるファッスル。ここまで素早いならば、ずらしでは回避しきれないかもな。

何発か回避できたものの、いずれかわせなくなる―――


「もう一発♪おしまいってやつ!」

「取ってつけたようなラップがうるせえなぁ!」


ナイフを立て、ファッスルの拳を受ける。

俺は今回後ずさりするだけで済んだものの、ファッスルは無傷でナイフはバラバラ。

正面だめなら距離を取りながらか、、、苦手なんだよなぁ、これ。


相変わらずファッスルは拳を向け、殴りこんでくる。

今回はあいつのターン、ってわけか。

今度はナイフで多少軌道をそらしつつ戦う。ナイフは折れたそばから創造して、数センチ拳をずらせるだけの最小限の振りで戦う。


「おうおう!?当たらないのは頭にくるぜ!」

「ラップはどこに行ったんだーーよ!」


ファッスルをけり、距離をとる。当然突進してくるファッスルだが、

すでに手は打ってあるんだよ。


「太くてかたいこいつは好きかい?」


「むう!」


空中で銃を3発、連射する。全弾体ボディに命中した。

だが、、、ファッスルにはほぼ0ダメージ。

どうやら筋肉の硬化により、銃弾を防いで見せたようだ。


「ここまでの筋肉はずるくないか?」

「もっと近距離でうちあってくれないとしけるぜ?」


バージョン3、アサシン的な倒し方に変更。

煙球を巻き、広間あたりが煙に飲まれる。そこでやるのは、気付かれないうちの暗殺。だがそれも、、、


「サイクロン!」

「やめてよーん!」


回転するだけで煙幕が吹き飛んでいくって、、、インチキか?


「微妙!もうちょっと駆け引きさせてくれよ!」



「ハハッ、や~めた!もうにはアドリブでやるか!、、、、、、」

「本気でやってやる、、、」




(ユードの空気が変わった!?)


「なあ、フェリア。ユードはまだ禁断の奥の手を隠してるの?」


「こんなの、見たことない、、、ホントに禁断かも?」


(なわけあるか!)



観覧席には、セムセム、マーセン、フェリアが試合を固唾をのんで見守る。

そこにとある生徒が一人―――


(ユードくん、、、カッコよく頑張って!)




ファッスルとユードは同時に前に詰める。、パワー、ディフェンスで負けているユードがとる手は、、、

ナイフを2本作り、ファッスルの攻撃をまた捌く。そう、徹底的な回避。豊富な手数を用いての。


「なんで当たんねえんだよ!」


(冷静に、、、すべてずらすだけ、、、)


だが、ファッスルもだてにBブロックには来ていない。当然のようにユードの動きを読み切り、またもや1発を叩き込む!


「この勝負おなか一杯♪ これでバイバイ(@^^)/~~~」

(きた!)


その動きすらすべてとらえ、ユードは軽くジャンプし捻り、伸びきったファッスルの

ひじにナイフを突き立てる!

そう。筋肉を作り、強化するだけならば、は特に関係はない!ナイフもピストルも効く!


「ふうぅん!!」

(下!)


ナイフを刺したすきを狙う攻撃も、ひきつけて回避。

狙うは筋肉のない弱点。殺しをしてた時代はいつもこんな感じに効率的にやってたからな。ある程度はアドリブでも最適な判断が勘でわかる!この位置は、、、ってね。


股間を蹴り上げられ、たまらず跳ね上がるファッスル。

まだまだ繋げる。戦術が見える。


「Ooh~!ボールがゴーンヌ!!!」


「刺しっぱなしは、、、」



「危ないぞぉ!!」


わざわざ空中に上がったファッスル。ろくに身動きもできんこの状況、、、

弛緩している筋肉、、、とにかく幸いなことに経験がないな。

ファッスルのひじのナイフを蹴り上げ、柔らかくなった腕を割く!

ファッスルは息も絶えたえ。必死に地面をけり、後ろへ転がる。



「やっぱユードは強いわー。Bブロックでも無双しちゃうんじゃない?」


「ファッスル様のはここから、、、」


「そう。に、考えず、、、、、、、脳筋。」


「 ? もうフィジカルも腕死んでるから意味がないんじゃ―――



瞬間。

突風が吹く。ユードの小細工ではない。ファッスルの突進。次にすることや、これを攻撃ともとらえない、、、ただ前に進む。

雑念の入らない本能のみの状態が、ファッスルの筋肉を極限まで張り、力を流す。ただそれだけが、この破壊力を出す。

本能で動いてたのはユードもほぼ同じ。だが、この超常を前に、脳は考えざるをえなかった。


「やべぇぇぇ!!!」



ユードは紙屑のように吹き飛んでいき、残ったのは轟音を上げて壁が崩れた広間スタジアム

先に帰ってきたのは、、、まさかのユード。


「ふぅ、、、魔法の重ね掛けなんてしたことないんだけどな。

今回は土壇場が強いようだな。」


空いた穴のおく、、、その他の壁、部屋も壊しながらファッスルは進んでいた。

ただ、戻ってきたときにはファッスルは何一つ怪我をおっていなかった。


「なあ。さっきのダメージ。半端ないだろ?どうして立てる?」


「知らねえよ、、、、、ごぶっ」


そう。かすっていたのだ。あの時、鉄の壁を作り、とっさに壁の前に前に泡を作り、

そこで泡と同時に仕込んだシグナルでファッスルを横にずらそうとしたのだが、

如何せん、火力が桁違い。2秒も持たなかく、壁は突破され、とっさに横にずれたものの、、、胸にかすっていた。

ダメージはやはり読みが正しかった。 意識がかすむ。 まあこういう時こそ、集中が上がるからいい、、、!


「早っ! どんなフィジカルだ!?」


(もう時間は少ない。真正面からあいつの防御を崩す。 いや、防御を崩しながら戦うのは、ちと火力が足りない。)


(弱点を創造《つくる》しかないかな、、、。)

ファッスルから逃げるユード。


ファッスルもユードを追い仕掛けるも、なかなか攻撃は当たらない。ファッスルはユードの適応力、、、しいてはアドリブ力を最大限警戒していた。

突進を交わせはしなかったものの、魔法の重ね掛け、、、それが意味するのは、手数が無限であること。

何しろ自分の体の秘密を即座に見破り、カウンター気味に攻撃を当てれて、さらに効果的に連撃もこなすユードは、早いうちに仕留めないとじり貧は必死。

それに、、、脂肪自分の限界ももう近い。あの突進が今度は完璧に交わされたりでもしたら、それこそ強化魔法のガタが来て、自身の敗北は確定となる。


対するユード。こちらは許容ぎりぎりのダメージを追っているうえに、

3つの魔法を同時使用してしまった負荷で魔力ももうスカスカ。

もう1度、あの突進を使われでもしたら、間違いなく魔力量は0になり、最悪さばききれずに敗北。

自身の使い慣れた「創造」も、あと5~6回武器を生成するだけでもう魔力は尽きる。それに、ファッスルはユードの攻略の必殺技がある(使いづらいが)のに対し、まだこちらは決めてすら見つけていない。



「なあファッスル。カミナはなんで暴風雪を起こせたと思う?」


「知るか!ずいぶん余裕そうな顔しやがって!」


「焦る脳筋はこの世界生きてけないぜ?発想、作戦、、、魔法は全部要領と解釈次第でどこまでも伸びる。 それ相応のイメージと頭脳があればな。」


「何が言いたいんだ!?」


「俺がおまえを倒すイメージを作れたら、、、実際倒せるってことなんだよ。」


考えろ、ファッスルを倒すための武器を。

いや、自分にも扱え、最高の破壊力を出す武器を。

あいつの筋肉による鉄壁の防御を貫通するほどの破壊力。

タイプは、、、銃か遠距離の攻撃手段ならいい。

そもそも、現実に今まであったようなものでなくてもいい。

反動は腕と足に魔力を纏えば何とでもなるはずだ。

そうだな、、、弾丸はピストルの3倍くらいあればいいか? いや、より具体的に、

より弾丸はイメージを明確に。

ライフル?いや、ハンドガンで作るイメージをしなければ。ファッスルに警戒されては無駄だし、小さければ取り回しがききやすい。

太さ25ミリ、長さ60ミリ。これくらいが普段のピストルに混ぜて撃つのに最適。

銃のデザインは大きく変わるものの、案外なんとかなるでしょ。

銃自体は、、、弾丸1発しか装填できない仕組み、ライフルをハンドガンに転用。

そちらのほうがフィクションのものを作る負担は少ない。

照準の問題は、、、俺の目と勘で何とかする。




「、、、ルートは創造つくり終わった…」


「長いんだよ!ようやくかよ!」



ファッスルが振るう剛拳。彼自身も力をセーブしたり、魔力、脂肪ともに限界が近いので、ダメージが蓄積したユードをとらえるにはいかない。

しかし、ユードは中央に立つ。


「こいよ。お望みの真剣勝負だぞ。」


「!? 回りくどいお前が、、、?」

俺も限界は近い。だが、ユードも限界が近い。ユードのことだ。俺を倒せるアイディアはきっと出ている。しかし、それを力で上回ればいいのみ!それに、最悪根性で何とかなる!


両者、相まみえる。筋肉を隆起させるファッスル。空手のユード。

道しるべも合図もない早打ち。

ファッスルが地面をける。豪速の突進ではないようだが、限界が近いくせに最初より段違いに早い!

だが、、、直線距離。体一つのファッスルより、遠距離手段があるユードが先に攻撃を充てるのが必至。問題はユードの攻撃をファッスルが耐えるかどうか!


「そうだな、、、ハンドガンでライフル以上の破壊力、ありきたりだがハンドキャノンで決まりだ。」


直後、筋肉を極限まで固めたファッスルの腹筋が爆ぜる!

その1撃、イメージ通りにファッスルの防御を抜く。


「ゴッパァ!!!」

激しく吐血するファッスル。内臓も損傷している。

ふさぎこむわけにもいかず、面を上げる。ちょうどユードも起き上がり、壁際から走り出していた。

だが、魔力をまとっていないせいか、かなり遅い。


そうか!ユードは魔力も体力も限界で、銃の反動も食らっているなら、、、

「一騎打ち」上等じゃねえか!!


動けば赤い跡が広がっていく。ナイフを握っていないどころか、拳を握っているだけのユード。

へっ。どうせ最後にもう一回あれを作るんだろ?

作らせて、撃つ前にカウンター気味に倒す。 それだけしか勝ち目はない。


最後の力を振り絞り、力を込める。今になって腕の爆傷が痛んできやがる。

が、足に力を込めれば動ける。腕は添えるだけでいい。ユードを貫くイメージ。


ついに、本当の一騎打ちが始まる。


やはりファッスルが速い。ユードに迫る!


(一発、一発は牽制で交わさせる。2発目の交わしきれないところでキル!)

「根性は本能より弱い。脳筋はこれかわせないでしょ。」


白粉が目の前に舞う。ファッスルはとたんに瞼を閉じたものの、焼ける痛みがする。


まさか、、、ユードのやつ、石灰を投げていたか!

この一瞬のスキ、、、筋肉が弛緩してしまったうちに、ユードは拳を受けていた。

体制も悪かったせいか、まともに入っていない!



そう、この1瞬の隙、ここを勝ち取ったなら、もう俺の勝ちだ!!

そういって、銃を作り、ファッスルに突きつける。

だが、ファッスルも只者ではない。もう片方の手で体制もよくないのに、俺の銃を弾き飛ばしやがった!そして首が膨張。本気の全身全霊の頭突きだ。



ユードは最初、頭が割れたとか言ってたな!ならば、この頭突きで沈める!

全身に力を込め、防御も上げる!これならナイフも銃も通さない!

「俺の勝利じゃい!!!!」



ファッスルが最後の力を振り絞る?





俺には腕一本残ってんだよ!


「なあファッスル。言ったかどうか忘れたけどな、手札は最初切った奴の負けなんだよ!!」



魔力をまとっただけの五本指をファッスルの腹に突きさす!

え?爪なんて通らないって?何のために穴をあけたんだよ!



「ガハッ、、、ゴブッ!!!」

ファッスルは口から膨大な量の血を吐き出す!

もはや魔法を維持する体力もなく、元の姿戻りユードに寄り掛かる。


ビンゴ!これでついに、、、勝ち!

の前に、、、



「ファッスル。もうさすがにギブアップだ。やめとけ。」

「・・・・・・・・・・・・」


ガシッ と首をつかまれる。少し力強い。

ファッスルの最後のあがきか。まあ、勝てる可能性があるなら賭けたくなる気持ちもわかるよ。 、、、俺が躊躇してたら、しめ落とされるだろう。

だが、俺も掴んだ勝利は手放さない。


「ごめんなファッスル。我慢してね。あと、、、カミナ。やりすぎは違ったわ。今なら、、、あれ、少しは理解できるかもね。」






「ちょっとユードが悲しそうな顔してるんだけど?」


「まさかね。ユード君はファッスルを何とかするだろ。鉄パイプでたたくとか?」


「鮮血の結末ね。ファッスル殿はお終いって悲しいけど、、、」











引きちぎる。思いっきり。爪を斜めに裂きあげて、ファッスルを破壊した。



「え??」

「ファッ、、する!」

「ありえないありえない!!!」


(しかたないよ、、、ユード君。あれはね。)






「、、、Bブロック、第一試合、、ファッスルの気絶により、、、、ユード勝利。」



困惑と静寂と鮮血が辺りにまみれた。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る