第15話 トーナメント⑥ 冷ややかな失望
「よっ。」
ケータイをボチポチしながらしゃべる人が一人。
そして、フェリアもいた。
「ん…ユード君、とフェリアさん、、、。なあ、あたしはAブロック決勝戦に出れるのか?」
「きみ2時間くらい寝てたけど、決勝は君が回復次第するからセーフ。
それとカミナのやつ、さっきすれ違ったけど、そそくさと広間に向かってったよ。」
「そう、、、先生はもうそろ来る?」
「たぶんね。」
ガラガラガラ!!
けが人が目覚めたばっかりなのに、轟音を鳴らしながら扉を開けるものが一人。
ローセル先生だ。
「セムセム。目が覚めたばかりで申し訳ないが、すぐさま試合の準備を行ってほしい。」
そういわれ、セムセムはベッドから跳ね起きた。
「カミナに一発きついの入れてきてやるからな!見とけよ~。」
「おっと。俺がぼこぼこにする分も残しておいてくれよ。」
「ケイルの分も。頼んだわよ。あなたならいける!」
「ああ!」 「…がんばれ。」
いまいち実感のわかないAブロックの決勝戦が、今始まる。
「あなたずっと私を殴るやら倒すやら言ってるけど、うざいからやめてくれる?」
「いいや。あんたのその考えを直すからね!」
「チッ…うるさ…」
「Aブロック決勝戦!カミナvsセムセムを行う!」
「始めい!」
「氷の
「わっと!あぶな!」
いきなりの攻撃に、魔力を壁状に展開させる。7発は防ぐことができたが、残り3発は貫通してあたしを切り裂いてしまう。
「凍結」
切られたところから氷が張る。閉じ込められアウト…だけど、こんなもんは余裕で割れる。
「せいっ!」
「魔力の放出ね…あなたのそれ、かなり厄介。」
「でも、それ以外はもう攻略してる。」
まだ序盤なのにずいぶん強い言葉使うなあ。カミナ。
まあでも、その言葉が本当かどうか試してみようかね!
「これは攻略できてるの?[チャクラム]!」
魔力を薄いわっか状にし3つに分け、鋭利にする。魔力そのものは基本的に無色なので、この攻撃は見にくいのが利点ってわけ。
そしてこれを操作し、カミナの死角を狙う!
「鋭さが足りない。」 「アイスウォール。」
カミナを壁が囲う。3つのチャクラムはあっさり止められた。
え?操作できるならなんで壁に刺さらせたって?これのためさ。
「だから言ったでしょう?攻略できたって。」
「いいや!できてないね!」
「ふん。どのくちが―――」
ベキン!と氷が割れる音がする。そう。砕くのさ。カミナが油断しているうちに。
「くらえぇ!」
「ぐっ、、、」」
カミナが背後の氷を割り、吹き飛ぶ。これはかなりのダメージになっただろう。
「やるね。さすがAブロックの勝ち上がりなだけあるわ。」
意外とぴんぴんしている。まあ、マーセンくんのあのパンチでも立ち上がってきたからね。当然って言ったらそうかも。
「少しは気分晴らしになりそう。」
「
ケイル君との戦いのときに見せたあの雲ができる。こうなると長期戦になると消耗するからまずい。
あたしの利点がつぶされたのはきついな…
焦りは禁物なんだけど、一気に決めに行く。
「今回は少し違うよ。」
瞬間、雪が降り、暴風が吹く。
あっという間に視界はなくなり、カミナはおろか方向感覚も失う。
「なっ…氷の魔法で風を起こせるなんておかしくね!?」
「機転と認知よ。 解釈のぎりぎりをつくイメージがなければ起こせない。」
あーね。氷の洞窟と大雪の日のイメージが似ているから起こせるってこと?
常人では考えつかないセンスしてやがる。まあ実際あいつの考えは理解できんけどな!
とはいえ、この状態でカミナに攻撃は当てることができない。あいつも同じはず。なら、まずは守りを固めなければな。
「
私の魔力のボールに触れてきている!
そうか、カミナの攻撃範囲はものすごく広いことを忘れてた! 多少あてずっぽうで撃っても当たるのか!
「[触感]の弱点。それは魔力そのものを使用すること。
魔力は魔法の起点であり、エレメントの魔法はそれが更に顕著になる。発火材の役割…水の役割となる。」
「いっ!?」
ボールが凍っていってる!?まさか…氷魔法の起点とされてしまったってこと!?
あたしは慌ててボールを捨て、魔力を回収する。
やはり、凍った部分は回収できない。あたしの魔法の範疇ではなくなってるのか。
…つまり、もう防御用の魔法は使用不可…
上等じゃん!そんなの少し前にやってんだよ!!
「私はカムイスポーティンとは違う。」
「うっ!?」
後ろを振り向くも、何も見えない。このままじゃ、ただ一方的にカミナのサンドバッグになるだけ。まずい!
足から魔力を放出し、猛スピードで駆け抜ける。ボールを展開していないのでガツン、ガツンと壁に激突する。まあ、あたしにはそうやってカミナの行方を探るしかないからね!
「また…少しはやると思ったのにまた失望させる…」
「ガャッ!!!?」
5回目の衝突をしたとき―――――氷の棘があたしに何本も刺さっていた。
見えないのに、、、どうして罠を張れるんだよ…
「ホント、戦略がないね。そんなでかい音なんて立てれば何が起きてるなんて一目瞭然なのに。」
話を聞く余裕もなく、あたしは棘を1本ずつ折っていく。
だが…折ることしか頭になかったのがダメだった…
「クソ…痛いぜこれ…」
「時間切れ。なんでいつまでも壁沿いにいるの?」
「なっ…」「
灼熱感が走る。これは胴体を貫かれた。ピンチ?
いや、チャンスだ!
さらに前へと踏み込む!これまでのあたしなら、槍が刺さったら放出で強化した拳で叩き割ってたけど、今はもう違う!!
貫かれながらも前に手を伸ばし、ついに人を掴んだ―――
「無謀で攻略できるわけないよ?ほんとに。
カムイスポーティンとは違うって、言ってたよね?」
掴んだのは、カミナに似せてある氷像だった。
槍を突き刺しているポーズまでご丁寧に作っていやがる、、、
槍は刺さったまま、足には、、、いつの間にか足首まで雪が積もっている。
魔力で足場を作っても凍らされる…もう回避も防御もしようがないってことなの?…
「氷で底をかさまししたブーツは動きにくくて走れないからあんまりやりたくなかったけどなー。ま。イキってたあなたもしょせんこの程度。わかった?」
「ボール!!」 「氷の
「グフッ!」
当然防ぎきれるわけがない。5つの斬撃が、あたしを切り刻んでしまった。
そして、魔力は凍っていく。解除するか―――しないか―――
足から魔力を放出して大ジャンプしようとしても、長い間展開されたこのフィールドの寒冷効果で凍ってしまい、ろくにジャンプできなかった。。
詰み、、、なの、、、?これって、、、、、
カムイスポーティンにも辛勝したのに、、、カミナに何もできないって、、、
「さようなら。期待はずれさん。」
「だめだわ、、、」
「極氷の氷槍・
雲が消え、雪もなくなり晴れわたる。
「おい、、、うそかよ、、、セムセムのやつ」
「セムセム、、、ちゃん!?噓だよね!?」
ケイルのようにぼろぼろになってしまったセムセム。
多くの氷が刺さっているが、特に目、みぞおち、胸をそれぞれ貫いている。もちろん、意識もない。
「俺がカミナをやっておけばな、、、」
俺の頭にはケイルの顔とマクスの顔がちらついてくる。
俺とフェリアは合図も言わずに飛び出す。
「チっ、、、」 たぶんマリウス先生の舌打ちがしたが、気にせず飛び出る!
「またあなた?いい加減にしなよ。[氷弾]《アイスショット》。」
「ピストル!」
氷をすべて打ち壊し、フェリアと共に広間に降りる。
「またお前か!やりすぎなんだよ!クソが!!」
「手加減しろってこと?意味わかんないなぁ。人のやり方に干渉しないで。」
「ユード!それは後にして![アワールド]!!」
カミナがぐらついてるうちに、セムセムと俺を抱えてフェリアは広間から出て行った。
「、、、セムセムの気絶により、カミナの勝利、、、」
カミナの圧勝。これでついにカミナは決勝戦に出る権利を手にした。
~Aブロックを終えてのマリウスとカノッサ先生の会話~
「なあマリウス殿よ。今回の実力診断テスト《トーナメント》表はあんたの考えに合わせて作ったのだが、、、結果はどう見るかい?」
「、、、、、俺もまだまだ見る目がなかったな。Bブロック
「カミナを抜擢したのも間違いだった。ファッスルが適任だったかもしれん。
もう俺は作成にはかかわらないようにするよ。」
「まあまあ。そこまで反省しろとは言ってないじゃないか。課題点は次に克服しなさい。」
~ウェネミ来客たち~
「はっはっは!またあの女子がやったようだな!」
「ほんとに、、、今回のブリューナクはこんなやつを入学させるほど経営難なのですか?」
「まったくだ!味方内で殺し合いはおかしいだろう!」
「キンズ様。Bブロックの試合は必見でございます。何しろ、、、一人、異質な生徒もいましてね。」
「ああ。そいつ次第だな。」
・キャラの顔合わせ章なのにろくに紹介できなかったキャラの解説
・アムルタート (女)
魔法 ・天秤(概念魔法)
一回戦のラストにカムイスポーティンに瞬殺されたあいつ。
決して弱いわけではないが、一発勝負をカムイスポーティンに宣告してしまって押し負けてしまった。
魔法は天秤。ある程度の事象を概念同士で等価交換することでおこすことができる。
起こしたい事象は、払った対価により決まる性質のため、自分の思ってた通りにおきないのもしばしば。
(カムイスポーティン戦では、防御力を捨て、その分攻撃力に変換した。)
なぜか自分のステータスに関してはとても精密に操れる。
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