第7話 暇を持て余す

ランカルでの試合も終わり、僕らは全員帰ることにした。

家に帰る途中で思ったのだけど、あの三人の中では、多分僕は最弱だろう。 だからと言って別になんかあるではないんだけど、もし3日後のトーナメントで一回戦で負けたら、どうせ応援しに来たサリばあなどの商店街のみんなはがっかりするなあ、 とか悩む。


僕の志が低いから? でもフェリアは知らんけどユードは暇つぶしの感覚でやっている。

魔法が弱いから? でもユードは違うけどフェリアは明らかに僕より殺傷能力が低いのにハイヒールキックなどの工夫をして何とかしている。

いまいちよくわからない気分の中、僕は家に帰って家族にお休みを言ってそそくさと二階に行き、寝た。



二日目。今日は特に何もないので、外でも歩いて気を紛らせよう。

まずはサリばあのもとへ行き、簡単な挨拶と、昨日の話でもしてみる。魔法のことなんて一切知らないと思うが、僕の話をよく聞いてくれるので、僕も気が楽になった。


「一回戦負けなんてしたらわたしたち悲しくなっちゃうからね。」


予想してた通りの言葉を言われ、はいはいと二つ返事で商店街を離れた。


次はかなり遠かったが、ユードとともに見たあの墓場に行ってみる。

また隅のほうに、王様がかがんでいる。

ビジー国の王、ブレーブ=ピティ。この国では代々ブレーブ家が王位につき、二人の魔道軍帥とともに政治、軍事を行う。しかし、あの人は暴君といえないが、何かパッとしたことを何もなせていない。言わばいてもいなくても変わらないってやつだ。よって、権力も国民の人気も関心もほとんどない。小さい子は名前すら覚えてないそうだ。


僕はピティさんに話しかけてみる。


「失礼します。この墓には何かあるのですか?別にあなたの親族ってわけではないようですが。」

するとピティさんが

「均衡のために犠牲となったものに合わせる顔などないのだが、こうしないと居ても立っても居られないからね。」

「この均衡を続けさせるためなら何でもしたいが、君たちブリューナクの人間やビジー国民に言ったらみるみるうちに崩れていくからな。こんな王様を許しておくれ。」


よくわからないことを言うので、また二つ返事をしてそそくさと逃げた。

昼は家で食べ、しばらく寝室で考え事をしているうちに、ランカルジムにまた足を運んでいた。

ユードやフェリアが能力を工夫しながら戦っているし、僕も最後の火の弾丸はかなりユード相手にいい感じに決まった。

荒削りの能力では手も足も出ないことは分かったのだし、ここから僕の戦い方を変えれば何とかなるかもしれない。

陽動や意表を突いた感じの攻撃なんかを試してみるが、そう簡単には決まらない。

陽動なんて手のひらから相手の後ろに回る軌道で撃っているが、のろまなうえに単調な軌道であるためにかき消されるのがおちだ。意表を突いた攻撃とは言ってみるものの、地面から攻撃するには両手を地面につき、無防備になっていないとだめで、しかもそんな早く出せないので脳天殴られておしまいだろう。

今日新しく考え付いた技なんて上に火をまき散らし、雨のように火の塊を降り注ぐ感じの技だけだ。

聞いた感じはすごそうだが、こんなのだと足止めくらいが限界だ。さらに細かく言うと、両手を挙げ火が地面に落ちるまで3秒くらいかかって、その間はとても隙だらけだ。まあ技を解いてから3秒間は自由に動け、火も降ってくるのだが。


この技につけるかっこいい名前でも考えながら家に帰る。そんな思いついたものでも雨の火とかの至って普通な名前しか出てこなかった。夕方になる前に帰ってこれ、風呂に入ったり、ご飯を食べたりしてぼーっと過ごした。

今日は暇を持て余していたが、実際はそんな暇もろくに扱えず、結局大忙しな日と何ら変わらず、むしろ気分は最悪だ。


明日はユードとかとなんかしようかなって思って、寝よう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る