第6話 特訓その2 強くなる、次に生かす

ジムを出て数分…

僕は4人分のお菓子、ユードは4人分の弁当を買いにそれぞれ分かれていった。

商店街ではそこそこ顔のきいているのが災いして、知り合いの店に  ビジーの希望の星! 魔導士見習いのケイル!  とか書かれたポスターが所々に貼ってあるせいで、すれ違う皆が僕のことを見てくる。  正直とても恥ずかしいので顔を焼いて後からキュアンナに治してもらおうか、などアホなことも考えつつ、サリばあの店におしゃまする。


「あら~ケイちゃん!学校はどう?あんたはこの商店街の誇りなんだからさ、お菓子なんて何個でもあげてええよ!」


「ちょっ、ばあや!それ恥ずかしいからやめれ!」


あの学校に通った時点で僕でも有名人? それもそのはず、多くの人は基本的に魔力の素質があると、学費のかさむこの学校よりも多少危険だが、報酬も弾み、実戦と経験を積める戦地にいくために魔導兵団に志願する。

こんな学校に志願するのは、元々魔法に適性を持つ人間を作るために結婚しているような家庭くらいしかないだろう。

僕は親が非魔導士だがそこそこ裕福なうえに、珍しく魔法に適性を持つ子供が生まれたので魔導の道を歩ませてやりたい、という親心によりブリューナクに入学した。

なので、少しでも期待に応えてやりたいけど、今の実力だと見て見ぬふりでもされてしまうだろう。


サリばあからお菓子をもらい、ユードがなかなか商店街の入り口に戻ってこなかったので、先にジムに戻った。 フェリアの回復は既に終わっているが、魔力が回復仕切ってないこと、火傷が未だにヒリヒリしているから、今日はもう無理。とも言っていた。

3人でお菓子を食べ、ブリューナクの先生などについて雑談しているうちに、ユードが汗だくで戻ってきた。あいつ、なんやら収穫があったと、購入してきたハンバーガーを配りながら言う。


「今さ、俺ケイファットバーガーでファッスルに会ったんだよね。そこでさ、あいつの魔法能力に気づいちゃった!」


とか言ってて、バーガーはおいしそうだったから買ってきた。とそれなりな理由を言ってた。 あいつの能力は決勝に備えて知りたかったが、ユードが種明かしの快感を味わいたいからダメ!とヘンテコなことを伝えてきた。


肝心のバーガーは、かなり肉厚、シャキシャキサラダでうまかったが、バンズに脂質が圧縮の魔法で膨大に閉じ込められてたらしく、まともに動けないほどに太った。

こんなものを選んだユードは当然ボロクソに言われ、自分も怒りをぶつけたが、

こんなの選ぶなんてセンスない~! とか ねえ、、トーナメントに向けて特訓するためにきたのに、、、ひどい、、 とか心無い言葉を言われ始めてからは、いつしか僕はユードを慰める役回りに回っていた。

取り敢えず全部の文句をぶつけた女性陣が離れた後に、僕はユードをランニングに誘う。いろんな場所を紹介するため、ユードを慰めるため、それにとっとと瘦せて試合するため。

取り敢えず僕の知ってる全部の場所、他国との国境などを五時間くらいかけて回った。

途中、大戦争の英霊を祭る墓地を回ったが、そこに王様らしき、いや、王様がかがんでいるのを見つけた。。 なんか不思議だけど、僕も今日はやりたいことがある為無視してユードを連れてランカルに戻った。

動ける分にはやせ、魔力もユードが回復したと言ったため、3戦する予定だが2戦目にして最後の試合をする。 地形はフェリアvsユードの時と同じに設定する。

僕が牽制の火玉を飛ばす。当然交わされるが、なんと交わしたと同時にユードが引き金を引いていた。 思いっ切り横に飛び何とかかわすも、バランスを崩してしまった。

大体なんだよあれ。本来身体能力を魔力で向上させている僕たちは、魔力の出力を一時的に大きくして、瞬間的に銃よりも速く動けるはずだ。

なのに、あいつは二発一気に撃てる連射力、的確に嫌な位置を狙えるエイムを持っているせいでまともにかわすので精いっぱいだ。

だが、僕も簡単にはやられない。火玉を自分の周りに漂わせることで、ユードとの近接戦闘を避ける。この技はシールドボールとでも名付けとこう。

近接を封じられたあいつは、銃に頼りっぱなしだ。

僕は大岩に飛び込み、難を逃れる。

だが安息もつかの間、上から手りゅう弾がくる!

手りゅう弾は火玉で打ち消せたが、爆音と同時にユードが懐に入る!

バックステップでかわすことは出来たが、これではまともに戦えない。


それなら、逃げを捨てる!


らせん状に火を放つ。ユードはやはり足が焼けてもいい覚悟で前に出ている。

僕がここで引いて勝てるわけがない。


「ソード」

ユードは決着をつけようとしている。はっきりわかる。ここで押し負けたら負け。

武器でも精神的にも勝った方がこれを制する。そして、こんな特訓ごときで引くならトーナメントでは勝てない。まして、導魔将になる僕の夢なんかはない!


手に火をまとう、いや、纏うなんてものじゃない。そんなコントロールに集中力を使う暇があるなら、規模を大きくしろ!

ほぼ手に引火している状態でも殴り抜いてやる!

相手の攻撃が届くより前に、顔に一発ぶち込めた!のけぞるユード。攻める俺!

ここで全部を打ち込む!


「根性で何とかなるのは最後の攻防だけだ。 その一回を逃したお前に勝ち目はない」

直後、足が痛みで止まる。 撒菱だ。 吹っ飛んだ時、いや、僕が捨て身で行った時からあいつはこいつをばらまいていたのか。すっかり下に意識がなくなってたことはとっくに見抜かれてたのか、、。


「魔力を込め、魔法を上乗せしたパンチ、、、それは捨て身でやる技ではないよ。

普段の攻めで使っていくべきだ。で?ギブする?」


残念だが、もうこの足ではユードの攻撃は防御も回避も無理だと思う。



でも、



「なめんなよ!迎え撃つことならできるんだぞ!」

「いいね~その意気込み。でも意思だけでは倒せないよ?」


策をめぐらす。 今できること、 ユードのやること。

あいつなら?

ここまで追い込んだら?

いや、ここまでしても倒れないから?

気絶させて勝つ?

2回で沈めるしか僕に勝ち目はない。


「ソリッド フレッド!!」

僕の残りの全魔力を二分にして、片方を打つ! この全方位の散弾と跳弾なら、爆弾なんて使えないはずだ!







、、、、かわすので精いっぱいだ。 ケイルの奴これでおしまいにする気だな、、、

だが、少しづつ、、、行ける!





ユードは玉を避けつつ、俺に迫る。もう少しで間合いはなくなる。しかし、近づけば、より玉の密度は上がる! ほら、やっと火いついたぁ!


「ふぅーんなら俺も最後の攻防いこーかな♪」


ユードが被弾しながら何かを投げた。 俺は体を逸らしてかわす。その直後、ユードが玉を回避してきた! しかし、バランスを崩している感じだ! ここで終わらせる!


僕は、残りの魔力を振り絞り、魔法を繰り出す。


「炎焼拳!!!!」


「ソード。」


互いにぶつかり合う。そして、ユードがまとわせた魔力を突破し、遂に長剣を破壊す




「出し惜しみしないのはいいね!だけどまだ意識が前にあるぜ?」


戸惑うと同時、頭に何か当たる。後ろ向いたら負け!と言い聞かせて、



だけど、そう考えてしまったのだから、もう負けだったのだろう。

拳が虚空を切る。そこでも意識はユードではなく自分の拳に向けてしまっていた。


「アゾット」


そう聞こえて、体をバッサリ切られた。そこまで深くはなかったが、もう魔力を使い切ったこともあり、力が一気に抜け、地面に倒れた。


「まじスーパーだわこの球ww」


僕の横をバウンドボールが横切る。こんなのありかよ


「でも君はかなりつよくない?フェリアにも万が一なら勝てるかも?、、、、」


意識が落ちそう。あいつの言葉もろくに聞こえず、考え事のことしかない。



ユード相手に頑張れた。僕にしては上出来だよ。でも、、、










悔しいよ、、、。何で全部かけても勝てないの、、何でユードは余力を残しても勝てるの、、、。悔しい悔しい悔しい悔しい。



そう思いながら、意識が落ち、目覚めたのは深夜だった。















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