第14話 潜入と落日


「ねぇ、斎炎さん。どうにかして僕と香崎君のメンバーチェンジ出来ないの?」

「無理だ。諦めろ」


自分と同じような境遇を送ってきた者の叫びを無視しきれない佐久務は、斎炎に直談判するもあっけなく返される。


「重奏の奴も言ってただろ?明日生きれば希望がくるってな。正直言ってカースティス相手にアレ香崎は無謀で自殺行為だ。 そこまでして掠り傷の喜びに浸っても、正直言って生きることの幸せには程遠く及ばない。」

帰ってくるのはただ、淡々とした現実。それでも、


「なら…来道さんに掛け合って入れてもらう!見回りなんて僕一人でもできるよね!?」

「ハァ……ガキみたいに言うな。頻発する魔道具を凶器とした犯罪をお前一人で抑えれるならそもそも魔導課が7つある理由わけないんだよ。 それに、明日が復讐の対価になると思っているのか?………香崎が死ぬことに賛成しているのか?」


………佐久務は実際に過去、研究所から逃げた。

あの時、憎いやつら相手に暴れることだってできたはずだ。

でも…もあったが…

本当は、明日が欲しかった。それは紛れもない事実。


「分かった………よ。」

完全に論破された佐久務は「幻崎生捕りにすりゃいいやん」とも言わずとぼとぼと、斎炎を後にした。


「………ったく、鹿納はどこ行ったつーの。」






そして、その後、とある部屋の扉を開け、語る。

「なぁ。香崎、カースティスにどうしても復讐したいなら…ちょっと手ぇかして?マーキングしとくから」




   ◇



「お父さん、お母さん…もし俺が今回の任務でいなくなったら、真っ先にロシアに飛ぶんだよ?」

「ど…土生………毎回そういうが、本当にできるのか?」

「正直わかんない。でも…僕が死ぬなんてかなり重大なことだしね。それに、第2課には強い人もいる。時間稼ぎくらいならできるさ。」


「………じゃあね。」

「もう十分金は………」

「じゃあね。」



  ◇



「君たち………準備はできたか?」

『『『もちろんです!!!』』』


来道の呼びかけに、三者三様の思いで答える。

特別なものなど何も用意しない。車とその身でカースティスに乗り込み、幻崎を切り飛ばすだけ。

覚悟を決めた3人は、車に乗り込み紅の光に照らされて発進する。



………それを見送る5つの影は、襲い来る影に気づきもしない。











「………佐久務。ここからは命懸けだ。妙な気は起こすなよ。」

「斎炎さんこそ。皆殺しはしないでね…」


「はぁ…ま、三手に分かれて侵入だ!うじうじするくらいならゲーム感覚でやりな、二人とも!」


「はぁい」と返事をして侵入を始める二人。




「!!!誰だ!侵入者だ!壁を直接ぶち破ってきたぞ!!?」

警報が鳴る。

液は垂れ煙立つその地で、3人はそれぞれ目的を遂行しようと動く。


被検体を救うため、

悪の研究員を裁くため、

幻崎魂徳を倒すため。



「………アレは…斎炎だ!おい!神獣をけしかけろ!!」

「無駄だ。散火球ショットダン


『ちょっ………あああ!!』

建物を神獣ごと焼き払う勢いで技を放つ斎炎。

その目には、一切の慈悲はない。



「ちょっ!?周りに危ないから大技使えないのになんて数!?」

「そのバッヂ…魔導第2課?ガキがいっちょ前に正義の味方かぁ…胸糞悪りぃ!死ね!!」


適応型含めた数多の神獣と強化系:ゴリラらしき毛深い筋骨隆々の男相手にナイフで防ぐのが精いっぱいの防戦一方に詰められる佐久務。

だが、ゲーム感覚の彼の余裕を崩すに至らない。


「おい脳筋!一端の脳筋ゴリラならジャブじゃなくてstraightで来い!」

「言動、発音まで調子乗って…被検体ゴミども同様いたぶってやる!!」


ゴリラの自尊心と安っぽいプライドを傷つけるのに成功し、腕を大きく振りかぶる渾身の一発をおびき寄せるに至る。


「ゴリラゴー・ストレート!!」

「《幻影ファンタズマ》。」


その一発は佐久務を貫通し………たものの、途端に輪郭がぼやけ消え、その拳は味方であるはずの適応型神獣を完全に破壊していた。


「………なんだ!?なんだ!?逃げたのか!?」

「アーホ。《光》《バリア》《火》:創成! 《障害を焼き切る光威テラス・バリアオフズ》!」


瞬間、他の神獣数匹とゴリラ男を囲むように貼られた複数のバリア。

そこに佐久務が小さな光を放ち、ガードを無視して男を焼き貫く。


「フフ………ハハハ!全然効かんわ!」

「跳ねろ。」


男が笑った瞬間、光が男の胸を貫く。

空いた先ほどより大きな穴に、この魔法の仕組みを悟った男は狼狽する。


「まさか…まずい!バリアを破壊しなけれ―――」

「脳筋が…遅い!もう俺のルートからは逃れられん!」


反射、さらに反射。乱反射。

太さを増し、火力を増し、本数を増した光は次第に球体を作る。

虚勢を張っていたゴリラも次第に断末魔へと変わり、バリアが焼き切れると同時に意識を失い、元の白服科学者へと戻る。



「………よし、ってあれ………」

安堵した佐久務は自身の近辺に、ガスが満ちた棺を見つける。

人一人がやっと入れるそれに近づき、蓋を蹴破り、中の人を抱きかかえてなだめる。


「ヴ…ヴヴ」

「もうだいじょうぶ。僕が逃がすから。こっち来て。」


佐久務がその女の人の手を取った時、手に感じる暖かな感触とともに背筋が凍る。



「ヴヴヴヴヴルル!!!」

「まさか―――!」


そう、その女の人はとっくに神獣と変わり果ててしまっていた。

神獣に背後から襲われそうになる佐久務だが、間一髪、斎炎が放った火弓がそれを貫き、事なきを得る。


「おい!佐久務!相手は神獣などにおいて未知の技術を使っているのは前々からわかってただろ!だから情けは要らんと言ったはずだ!」

「………ごめん。」


誰も救えない佐久務は、斎炎の𠮟咤を重く受け止め、また剣と魔法を振るう。



   ◇



「…香崎君、皆の無事を祈ろ?今日の不幸が終わって、明日からの幸せが来るように。」

「知ったような口聞かないで下さい…あんたに僕のことは判らないでしょう?」

「いいや。分かるよ。経験が違くても、不幸は誰だって味わうから…。」


ふてくされている香崎、なだめる重奏。

香崎は辺りをきょろきょろ見渡し、重奏は香崎のみをしっかりと見つめる。


「………ハァ……避けきれないものだ。不幸など。受け入れて進め」

流石に子供のわがままには付き合いきれないという顔で来道は淡々と返す。


「だけど……」

香崎も次第に諦めを帯びた表情となり、下に向き始める。


「ね。香崎君!残党どもは私たちでやろ?」

「お前も無双したいなら俺に弟子入りしな!誰にも負けんぞ!」

『『佐久務君相手に10秒持った試しもないのに何言ってるんだ…』』

「………イワナイデ。」


新島朱音も香崎をなだめ、建仁晃は赤らめながらも香崎を元気づける。


「………なぁ。香崎。もう一回【仮想仮執行領域】やっとく?」

「………いいよ」






「おおーーーらぁ!!」

その瞬間、第2課のすぐ眼前を青い熱線が焼き払い、地面が溶け高熱とともに

弾け飛ぶ!


『『『何だ!!!』』』  「お前らはそこにいろ!危険すぎる!」


先ほどの空気を打ち破った刹那、来道が廊下を蹴り、オートドアを突き破って外に出、その一瞬のうちに電気をレーダーのように使い襲撃者を特定する。


「ゲッ!来道ってこんな早いの!?魔道具:【拡散熱線】!」

赤髮ショートの襲撃者が指10本から熱線を放つも、来道の圧倒的速度の前に全て歪み、報復の蹴りを腹に叩き込まれる。


「グッ!!?おっも!」

「名も知らぬ者。遺言は決まりか…《雷割かみわり》」


刹那、襲撃者が吹き飛ぶ速度を遥かに超えた迅雷の速度で胴体に刀を当てる。

即両断はできなかったものの、みちみちと胴体に刀が食い込んで……




「概念適応・ゼリー!」

「お前は………」 「…兄貴!」


だが突如、彼の仲間らしき男が刀と胴体のわずかな隙間にゼリーを滑り込ませ、刀に纏っていた雷をすべて放電させる。

だが、二の矢三の矢を用意しない来道ではない。再び雷を纏い、本気の唐竹割を浴びせ―――



「斜め45度に熱線を放って。」

「な!」


その一撃は、の予言通りに反動で上手く回避される。


流動雲りゅうどうぐもぉ!」

「チッ…!」

3の矢を放つ隙も無く、襲撃者と来道の間に展開された黒いゼリーの壁が先の攻防を無為にさせ、両者ともに地面へと降り立つ。

先にいるのは3人………いや、6人。



「バーカ。何慌てて先手取ろうとしてんだよ。」

「す…すみません!」

「こ…怖い…あの人、なんかひやひやする…」


あのゼリーの魔法使いの前に出たさっきの赤髮の襲撃者の横に、ヒョロ黄色坊主、ゴリマッチョ青ニット、艶やかな緑マフラーを付けた男女四人が同じ茶色のコートを身に纏って立っている。


「俺は『熱線メッセン』ジャーの赤石あかいし げんだ! おい!来道め!かかってこい!」

「僕は『斬撃黄ざんげき』の佐伯黄さえき 井樽いだる…よろしく。」

「私は『遠心緑えんしんりょく』の高菜華たなか リョウスク………ホントは赤が良かったのに………」

「俺は、『巨大化』の相藤あいとう 静漢せいかん、ぶっ潰す!!」





『『『『おい!聞けよぉ!!』』』』

だが来道はそんな下っ端など視界にも入れず、後ろで不敵に笑う『千里眼』の女―――木更道きさらどぅと髪をゼリーで整え中のとある男にのみ、集中を裂く。


「貴様………何を考えている。」

「お、俺か!重奏………いや、来道!おまえを倒しに来たんだよ!」

「なんだと…?」

困惑する来道をよそに、子分たちが囃し立てる中でそのゼリー魔導士は名乗りを上げる。


「今日の生活のため、明日の希望のため! キッツイ兵役も難なくこなすこの俺、

第7課班長、克堂こくどう 隆紀るき!木更道さんの後ろ盾も借り、いざ参ら―――おい!せこいぞ!!」

「時間が無駄だ。取り敢えず四肢を折ってから説明してもらう。」

天下雷あまがらん地士葺ちしぶき》。」


子分たちも「卑怯!男じゃない!」と罵るものの、その声が最後まで届かないほどに一瞬で克堂を切り付けながら連れ去る来道。



「慌てない。あいつは強いからね。そうやすやすと死なないさ。」

その軌跡を一生懸命追いかける4人に木更道が制止させ、落ち着かせる。



「なっ………!」

「フゥー。あぶな。ゼリー硬化は安心安全!」

克堂を上空まで押し込んだ来道。刀の雷は一切の放電が起きていないものの、何故かその刀は克堂の肉を食むには至らない。


「衝撃を受けた瞬間に固く堅牢になるゼリー。俺のこと知らずに喧嘩売るってかぁ!」

「難敵、か………」

ゼリーの上から切り伏せることは不可能であると判断した来道は、高速の詠唱とともに手数の多さで決めにかかる。


「迅雷風烈。」

「電光雷轟。」


億越兆滅ちょうめつ!」

「…なに!」

其の不可視の連撃は、ゼリーの硬化する速度を遥かにを超え、確かに克堂を削る。


「クッソ!U字ゼリー!」

堅牢ゼリーでは防ぎきれないと判断した克堂は、次に自分を囲う様に楕円形のゼリーを展開する。

それは来道の刀から雷を放電させていくものの、来道はそれを気にせず切り続ける。

「甘いわぁ!」

「時には肉を削らなきゃいけないってのは男のしんどいとこだなっと!」


克堂が決めた瞬間、来道がゼリーの上から克堂を切り刻もうと一気に加速した迅雷の刀を振るい、ゼリーの真ん中を伸ばさせ切り込みが入る。

だが。

「引っかかったなぁ!お終いだぁ!」

「早計だな…ッ!?」

刹那、もはやオート迎撃のように、U字ゼリーの上両端が来道の首に棘を飛ばす。

力が入っていたせいでワンテンポ遅れた来道に2本とも刺さり、ドバドバと赤い血を流させる。



そして、

「さすが兄貴!マジカル:ビーム!」

「!?」

後ろに仰け反った来道に放たれる先ほどより太く、高温のビーム。

だが発射に気づいて居なかったにもかかわらず、視認してから体をのけぞらせて回避を間に合わせる。

だが、




「おいおい…廃工場では熱いバトルしたってのに今回は仲間外れってないよなぁ!」

「貴様ぁ!?…グッッ!!!」


突然降って来た一本の半透明で鋭利な物体は回避しきれず、肩を貫かれる。

視界を上に向けると―――






「さあさあ!みんな大好き立壁就夜さんの好感度下げリンチタイムだよぉ!!」

「………分からん…何故だ!何故第7課と第4課が徒党を組み第2課―――がぁぁっ!」


一瞬の戸惑ったスキを突かれて克堂のゼリーで硬化させた蹴りが来道の後頭部に直撃し、地面に窪みができるほどの速度で叩き落された来道の額からは血が滴り落ちて顔面を真っ赤に染め上げていく。


『『『『さっすが兄貴ィィ!ツええ!』』』』

「どうよ!4人を背負うは!希望が湧きまくりだぜぇぇ!!」

「ハァ……あの子ら、ほんっっとうにアホの子ね………」

「まあ良いじゃねぇか。何時でもチームワークは大事、ってもんだろ?」


「………分からん…分からん…一体何をしようと言うのだ…お前たち!」

刀を支えとしてよろよろと来道が立ち上がり、目の前の理解不能な現状を探ろうとする。

だが、


「あなた達の所に『佐久務芽生』って奴がいるでしょう? ちょっと……経過観察の為会いに来たんだよね。」

「それと…1年間くらい寝込んでくれる?存在、強さ…どちらも計画の邪魔なの。あんたはね。」



  ◇



~第2課内にて~


「ちょっと!来道さんとか大丈夫なの?」

「分かんない…」


中に残された香崎、重奏、新島、建仁の4人は、外で荒れ狂う雷と熱線を感じ、来道の安否に不安を感じていた。


「なぁ…カースティスってもしかしたら、別働隊ってやつがいて、それが主力抜けたタイミングで俺たちを襲っているんじゃないのか?」

「…多分、その線が一番あると思う。………私は来道さんの手助けに行ってくる。3人には、『仮想仮執行領域』渡しておくから、それに隠れておいて?絶対に壊されないし、安全だからね!」


そう重奏詩音が踵を返して魔道具を探しに行った瞬間、



「ガッ………」

「えっ………?」

「なんで…え?……嘘だろ?」


「まさか佐久務が本部に今いるだけではなく第7課がを消しに来るとはな………この機会は実に好機だ。このまま本部に戻り、侵入者を排除すれば、問題点はすべて水泡に帰す。」



その手刀は、重奏詩音の脇腹を貫いていた。



「だ……なんで?…ガフッ!」

「おいおいおいおいおい……噓だったのかよ!??」


「……香崎……君?」


「香崎か。それもそうだが…本当に貴様らはお人よしだな。」

香崎?は地面へへばりこむ重奏を蹴り飛ばし、第2課を嘲笑うように語り始める。


「経歴不詳の私をなんの疑いもせず迎え入れただけに過ぎず、斎炎が持ち寄った『幻崎は魔法を影に沈める』……影に相手を沈めたり、魔法の根源たる魂に干渉できる『沈魂』を持つのにも関わらず、微塵も疑わない……」

「最早お人よしと言うよりも馬鹿のほうが相応しいか。」


もう、皆がこの状況を理解して構える。

不思議な点はいくつでもある。でも、何時カースティスで活動してたなど野暮なことを聞く必要などない。

この男こそ香崎を騙り第2課に潜入しながら殺人実験を行うカースティスのトップ、幻崎魂徳なのだ。


「コーススクリュー・プルハンズ抜き手!!」

「呪詛:影内-DFF!」

「グフッ………『響いて』止まれ…!」


「この姿で貴様らを相手取るのはは少々厄介だ。」

三人の攻撃が死角なく幻崎に襲い掛かるが………




「概念浸食:《虚空幻界うつろうつろ》。」

影が地面を縫いながら周辺の世界を侵食する。

幻崎の周りには影が覆いかぶさり、光を一切通さない暗黒となる。


そう、これこそが『概念適応』の上位技、『概念浸食』。

概念適応が相手に自身の魔法を適応させるなら、概念浸食はエリア一帯に自身の魔法が常時適応される床を作り出す。

この場所で戦うことはもはや無謀………だが、


「んなに!そんな細工なんてぶっ壊す!」

「だめだ…建仁君! ガハァァッ!!」


影を壊すべく地面を覆う黒に触れた瞬間、建仁の体から力が抜けていく。


「せっかちだな。まあ私の着替えが終わるまで足掻けばどうだ?」

「…んにゃろぉ!!!」


掛けていた強化系魔法をすべて解除され、感覚のズレから転びそうになるのを踏ん張って、幻崎が中にいる影塊に向けて拳を振るう。


「おら香崎ぃ!出てきて話しろぉ!!………硬ぇ!」

だが、魔力を纏っただけの拳では、影に一切のヒビを入れることは出来ない。

そして建仁の腕が、影の中へと徐々に沈む。


「おい!放せっつーの!!」

「終わりだ。………まあ、嘗ての礼だ。苦しまぬよう一撃で終わらせてやる。」


その瞬間、建仁は手を伸ばした重奏をつかむこともできず、逆に影の中へと一気に引っ張り込まれる。


「さようならだ。黒独こくどく。」

「ガァ………」


瞬間、幻崎を覆う影がガラス細工を叩き割ったように崩れ去り、中からは右手を影の上から滴るほどの血で濡らし髭を生やした黒髪で黒いロングコートの男が現れる。


「……まずい!!新島ちゃん!右に倒れている建仁君を安全なとこに運んで!!」

「師匠は!?」

「幻崎相手に!!」



「何処までも愚かで無謀で無知な奴らどもだ。魔法を封じられてかつ重症の女一人で私を倒すことは愚か、相手など出来る訳が無い…。」


「女?舐めないでね!まだまだで元気一杯で未熟な女の子よ!」


そう言い放つとともに、重奏は上にジャンプして影との接触をほんの数コンマの間だけだが、離す。


(隙だらけ。鳩尾貫いてしまいか…)

幻崎が地面を蹴り距離を詰めるも、次の瞬間、呆れの表情は驚愕に変わる。


「『響いて』爆ぜろ!」

「グッ!」


重奏の言葉通りの爆発は、幻崎を傷つけるまでには至らないものの、かなり後方に吹き飛ばし、コートの袖をを焼き払う。


「…まさかまさか。詠唱を極限まで短縮して放つ魔導士がいたとは。」


「へっへー。私たちの魔導課は超ブラックなんでね。子供たちのケアに回す時間の為にあんたや詠唱に構ってる暇なんかないの! ま、経歴は後で聞かせてもらうけどね!」



「フン。安心しろ、今日で魔導第2課はこの世で最も深い夜に鎮むからな。」




「へへっ!安心どころか満足だよ!町に平和をもたらして、皆をちゃんと守れて、もしかしたら『二つ名』まで付けて貰えるかもしれないからね!」

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