余話、ゆかりの涙
その夜、ゆかりはゆいかの部屋で、新しく買った髪飾りを添えたゆいかの写真を前に楽しそうに今日のことを話していた。そして話しているうちにゆかりは、いつか陽光を二人で歩こうねとゆいかが言ったのを思い出した。もうゆいかはどこにもいない。
だんだん元気さで塞いだ悲しさと寂しさがゆかりの心にこみ上げた。世界の守り人に求められるのは悲しくても笑顔だと、ゆかりは涙を急いで拭く。でもどうしたらいいか分からないとゆかりは不意にこぼしてしまう。
そのとき、いつもおしとやかなお付きが、ゆかり様と駆け込んできた。振り返るとその手には新聞が握られている。
「どうしたの。何かあったの?」
「い、いえ。あの。お忍びのはずが写真を撮られています」
ゆかりは新聞を受け取る。その一面には、ゆかりの写真があった。見出しには、守り人は忘れないと書かれている。それは昨日のアクタ討伐の写真だった。誰が写真を撮ったのだろうか。ゆかりは、方向的にはあの拡声からくりの後ろで直立していた警察官の辺りからだと気づく。そしてまた、なぜいまだに強国が対立する輪球会議ですぐに許可がおりたのかも彼女は理解した。大方、ゆいかの亡き後もまだ世界の守り人が顕在だと宣伝したかったのだろう。
ゆかりは利用されている。それでも彼女はよかった。ゆいかの、大丈夫にするよという言葉を、ゆかりは思い出している。
「笑ってみせるから」
ゆかりは新聞に写る自分の姿に言った。それからありがとうと言ってお付きに新聞を渡し、食事の間へと歩いていく。そうしてゆかりは、昨夜石英にもう一度陽光国を歩きたいと頼んだことを考えることにした。
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