第4話 9月23日
昨日の事を思い出すといまだに背筋が寒くなる。
ここ数日は調子に乗っていた。今日は観察するのを止めよう。
人間観察はもっと慎重におこなうべきだったのだ。
そう思いつつも、私は無意識のうちに視線をさまよわせていた。周りにいるのは、高齢の女性と子供、ベビーカーを引いた女性と子供、スーツを着た男性と子供、1人で遊ぶ子供、それと……。
思わず私は声を上げてしまった。なぜなら、視界の端にあの時の赤い服が見えた気がしたからだ
しかし、あの時の女性はどこにもいない。それどころか、赤い服を着ている人など周囲にはだれもいなかった。
ほっと胸をなでおろしつつ、周囲から刺さる視線に耐えきれず、急ぎ足でその場を離れ移動した。
移動している間も、身についたクセは抜けきれず、すれ違う人を見てしまう。
若い男性の集団と子供、ペットと散歩する男性と子供、自転車に乗る女性と子供、買い物帰りの高齢女性と子供、ベンチに座る若い女性と子供……。
おかしくないか?そう思った私はその場に立ち止まってしまった。
『子供』が多すぎるのだ。もちろん、それ自体はおかしなことではない。でも、何かが私の中で引っかかる。
そんな事を考えていた時だった。
「クイ」っと私の服を引っ張られた。
何度も何度も、私に呼びかけているかのような力で、服を引っ張っている。
私は、ゆっくりと服を引っ張る主を見た。
そこには、あの公園を赤い服の女性と去っていった子供がいた。
言葉にならない音を口から絞り出していると、その子は口を開いて言った。
「ねぇ、みえてるの?」
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