第4話 なにかときめきましたか?
「おしゃべりしました」
新入生のなぎさが、コンペについて教えてくれる。
「コンペっていうのは、大会のこと。いくつかのクラスに別れて、いくつ大会用の課題が登れたか競うの」
コンペの話題で、新入生のなぎさ、裕太くん、学くんと話した。他の人は大なり小なり経験がある。今回のコンペは、以前行った大学の近くのボルダリングジムで開かれる、小規模なものみたい。私は、出るというより見学者として行くのを勧められた。ボルダリングがどんなものかつかむために。
「私の行っていた塾で、講師が何か話すたびに、物事には目的があって、とか話してた」
私が話すとなぎさも、
「私のとこもそうだよ! 講師の中で鉄板なのかな?」
と話した。なぎさは5級を登る。私にも登り方を教えてくれ、私のことを筋がいいとほめてくれる。単純にうれしい。
「大学の授業は居眠りしがちだから、ボルダリングはがんばりたい」
「いや、勉強もしろよ」
初段を登る裕太くんと、3級を登る学くんとは授業とボルダリングへの意識が違うみたい。学くんはちょっとマジメかな? 私だって一限は眠る。
おしゃべりをしていたら、次の人が登っていた。あれは――――誰?
手と足を使い、静かに登っている。私みたいにどんどん音を出さず、音もなく登っている。あの課題は3級。
吉田さんだ。私が話す時と違う雰囲気。一瞬誰だか分からなかった。真摯、ひたむきに登っている姿にドキッとした。ヒールフック、あんなに足を上げるんだ。私はヒールフックなんて分からず、私の目線を見た裕太くんがつぶやいていた。吉田さんが登る課題は、裕太くんの課題より易しい。でも、裕太くんも見ていた。あんなに、上手に…………。
ボルダリング、何かが始まりました。
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