第6話
この部屋に訪ねてくる人間は訪問販売か宗教の勧誘ぐらいしかいない。
しかし、今は午後10時を回っていた。こんな時間に来る事はまずない。
誰だろう‥‥。
動悸がし、恐怖もあったが、私は好奇心に負け、ドア穴を覗いた。
そこには若い男が何かを持って立っていた。こいつは‥‥隣人か?
何だろうと恐る恐るドアを開けると、その男はまたニコニコしながらこう言った。
「これ作りすぎちゃって、よかったらお裾分けです」
作りすぎた?どうやったら一人で作りすぎるんだと思いながらもお腹が鳴ってしまった。
「ふふっ、何も食べてないんですか?」
男は馴れ馴れしく笑いながらそう言った。
「あの、私たち会った事あります?」
「あ、ご挨拶がまだでしたね!僕先週隣に越してきた柏木と言います。よろしくお願いします」
「はあ」
「すいません、いきなりびっくりしましたよね?でも僕料理するのが好きで、あれもこれもって作っちゃうんですよ。もしよかったらこれからも持ってきていいですか?」
「‥いいですけど」
いつもなら話もまともに聞かない私だが、この時は何故か悪い気がせず、自然に会話をしてしまっていた。
「じゃあ、これ!」
男は半ば強引に私にタッパーを渡した。
「ありがとう」
「明日も頑張りましょうね!では」
そう言うと、男は隣の部屋に帰って行った。
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