第5話


 誰も居ない。


 仕事で疲れた体と静かないつもの部屋に安心して買い物袋を床にどさっと置くと、そのまま倒れ込むように転んだ。


 この重力に引っ張られているような感覚がとても心地よくて好きだ。


 気がつくと外はすっかり暗くなっていた1時間ほど床で眠っていたようだ。


 思い出したように買い物袋を持ち上げると、買っていた冷蔵物の冷たさで袋はびっしょり濡れていた。


 また無駄にしてしまった。


 野菜は無事だったが、アイスはドロドロに溶けていた。野菜室の傷んだ野菜と今日買った新しい野菜を入れ替えた。


 ジャケットをハンガーに掛け、服を徐にその場に脱ぎ捨てシャワーに向かった。


 そして、さっぱりした私はベランダに出て月明かりを見つめていた。辺りは住宅街が立ち並んでいる。


 暑い‥‥汗を洗い流してもすぐまた汗をかく。涼むつもりが汗ばんでしまった。


 この部屋にはテレビもない。しかし不便ではない。静かにゆっくり過ごすのがなにより幸せを感じるからだ。


 お腹が鳴った。


 お腹は空いたが、作る気分ではなかった為今日はそのまま眠ろうと横になった。


 その時チャイムが鳴った。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る