第4話


 会社では特別目立つ事もなく静かに一日を過ごす。お昼ももちろん一人で済ます。といってもお弁当なんて作ってこれる程家庭的ではない為、毎回近くのコンビニで弁当を買って自分のデスクで食べる。


 ランチの時間は割とみんな外に出ている為気が楽だ。


 会社では業務連絡ぐらいで殆ど会話をする事はない。あるといったら時々男性社員から声をかけられるくらいだ。


 でも興味はない。


 お前らみたいななんの苦労も知らないような生ぬるい頭のやつなんて。指に光っている指輪をなんとも思わないような性根の腐ったやつなんて。香水臭い、私は香水の臭いが大嫌いだ。


「河野さん、週末暇?」


「週末は忙しいです」


「じゃあさ、来週はどうかな?」


「来週も忙しいです」


「じゃあいつだったら空いてる?」


「とりあえずしばらくは忙しいですね」


「そっかぁ。もし空いてる日あったら俺に教えてよ」


「分かりました」


 このやりとりを一体何回したことやら。


 私は一刻も早く仕事を終えて帰りたいと思っていた。幸い私は残業が殆どない業務の為定時には帰れるのだ。


 午後五時を少し過ぎた頃会社を後にした私は近所のスーパーで買い物をして帰る事にした。


 私がアパートに付き鍵を開けていると、丁度隣人も帰ってきた。


 大学生かな?若い男だ。ニコニコしながら私に会釈をした。いつの間に越して来たのだろうか。気付かなかった。


 部屋に入り辺りを見渡し私はホッとした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る