第3話


 お腹も満たされ、私は寝室にいるでかい塊に視線をやりながら身支度をした。


 三十を超えると肌質も髪質も悪くなるし化粧ノリも悪い。しかし、会社に行くとなるとすっぴんで行くわけにもいかず仕方なく化粧をする。


 自分で言うのもなんだが顔は整ってる方だと思う。だから適当に化粧をするだけでもまあまあな仕上がりになるのだ。


 どれにしようか。ハンガーにかけてあるスーツの中から一番臭いの少ない物を選び袖を通した。


 胸あたりまである髪を一つに結び、パンプスを履くと、大して中身のない鞄を持ち玄関を出た。


 鉄の階段をカツカツと降りる。


 会社までは電車を乗り継いで一時間程だ。


 電車は苦痛だ。


 通学途中の学生やサラリーマン、こんな平日に呑気に出かける家族連れ。普通に息をするのも嫌になる程人と人が近い。


 数十分電車に揺られた後は会社まで歩く。


 いい天気なのが自分が責められているような気分がして顔を伏せた。


 お天道様、私を見ないで下さい。


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