第11話 ウォーキング

オリオン座が出ている。

星座はよくわからないが、これだけは知っている。

隆さんが毎晩ウォーキングをしていると言うことで、ご一緒することになった。

隆さんは、我が校の登山部のOBだ。隣に越してきた時は、びっくりしたもんだ。

ロードワークなんだろうと思っていたら、隣のおじさんも一緒のマジのウォーキングだった。おじさんの方はふうふう言ってるが、正直走り出したい。


「康。その顔どうしたの」

隆さんが口火を切った。『椎ちゃんのお風呂を覗いたのがバレて、母ちゃんにボコボコにされた』とは言えない。苦笑いで答えた。


「おばさんの気に触ることをしたんだろ。あの人厳しそうだから。」

よくわかってらっしゃる。


「もしかして、うちの娘と付き合ってるなんてお父さんに言ったのが原因?だとしたらごめん。」

隣のおじさんが口を挟む。いえいえ自業自得ですよ。大体そんなガセネタ誰に聞いたの。


「正月に二人で帰ってきたから。てっきりそうだと思って。」

おじさん恋愛経験なさすぎ。家、隣なんだから一緒に帰ってくるよ。それに二人じゃなくて三人。椎ちゃんもいたでしょ。


「そっちのおじさんは、どう?」

隆志さんが聞く。どうと言っても、相変わらず母ちゃんの尻に敷かれてる。あんなののどこがいいのか。


「ああ、君たちのお父さんなんだって。」

隣のおじさんが隆さんに向かって言う。マジか。知らんかった。悪口言わんでよかった。


「知ってたんですか?別に隠してたわけじゃないんですが。」

隆さんが言う。


「同じ会社だからね。それとなく教えてくれる人もいてね。」

うちのおじさんの方は気づいてるそぶりもないけど。


「ああ、きみのお母さんが戒厳令引いてるからね。会社内で彼の耳に入ることはないよ。私とも勤務場所が離れてるし、部署も違うからほぼ接点ないしね。」

顔に出たかな。この人、顔色読むのうまいな。

 

「母に説明するよう言っときましょうか?」


「言わなくていいよ。」


「父さんがそれでいいのなら。何も言わないですけど。」

隆さんが言う。隣のおじさんは、少し笑って頷いた。


それからは、隣のおじさんは、息が上がって会話にはならなかった。お陰で、隆さんと僕とで、我が校の登山部の行く末について熱く話ができた。


この日の協議で決まったことは、隆さんと僕は、ウォーキングの後は、さらにロードワークをすることになったことだ。

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