第9話 しつけ
居間の鳩時計がなった。
普段は意識しないけどこういう時は気になる。
息子と私、聡さんと椎ちゃんで緊急の会議だ。
聡さんを家に引っ張り込んで、一年半くらいか、まだ籍は入れてない。
聡さんが口火を切った。
「お隣さんの娘さんと付き合っているのは本当か?」
息子が、あんたには関係ないだろという顔で不貞腐れている。
オス同士のナワバリ争いもまだまだ中途半端だ。思春期の息子としては父親づらされても頭にくるだけだろう。
「お隣さんに言われたんだ、『うちの娘がオタクのお子さんと付き合ってるそうで』なんて。」
「ああ、あの丸い人か」息子がつぶやく。
「失礼な事言うな、その人が、誰か知ってるか?」
あんたの元妻の夫でしょ。しってるわ。引っ越した次の日には、奥さん来て説明されたもの。ああ、自分の娘に手を出されたと思って怒ってるのか。
「俺の会社の上司で、とにかく厳しい人なんだ。下手したらクビになるかもしれない。」
そっち!まだ、気づいてないの!ほんとばかね。まあ、この馬鹿っぷりがぴったり来てるのだけど。
「リストラをにおわされたんだぞ!」
聡さんの自意識過剰なところは嫌いじゃない。けど、たぶん、違うと思うわ。私も一緒だったけど、多分あなたのことはお隣さんとしか思ってない。名前も覚えてなかったし。
「でってもらわないといけないかもしれない。」
クズだわ。転がり込んできたのは、自分の方なのに、このセリフをまっすぐ言えるなんて。惚れ惚れするような、クズっぷり。
「お父さんそんな言い方はないわ。この家に越してきたのは私たちの方だから、出てくのなら、私たちの方よ。」
椎ちゃん、いい子ね。なんで、このクズの下で、こんないい子が育つのかしら。でも、貴女には居てもらわないと困るわ。おばさん、ほんと助かってるの。
「椎ちゃんが、でてく必要はないよ。」
息子がいう。あら、立派!女の子を庇うなんて。でも、変ね?椎ちゃんの様子も変ね。
ゴッ!!
息子が吹っ飛び、ガチャンと食器が割れた。
「いきなりなんだよ!」
息子が声を上げる。
黙りなさい。あんた、何かしたんでしょ‼︎
ガッ!
たいして強く殴ってないでしょ。さっさと座りなさい。
ドガ!!
「おばさんもうやめたげて、康くん顔の形が変わっちゃう。」
椎ちゃんが間に立つ。やさしいわね。でも、クズはこう躾けるの。泣き寝入りはダメよ。
その日の会議で確認したのは、『のぞきは犯罪だ。』ということだ。
さあ、椎ちゃん二人でおいしいものでも食べに行きましょ。お詫びにおばさんご馳走しちゃうわ。聡さん、あと片付けはよろしく。
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