第7話 女子会
窓の外を行き交う車が、ヘッドライトをつけ始めた。
父の帰りが遅くなると言うことで、お隣さんと連れ立って、お食事会に来ている。
男どもは、置いてきているので、話の弾み方が半端でない。
もう、二時間近く経過しているが、盛り上がりは一向に衰えない。
「案外気づかないのね」
椎ちゃんが、ポツリと言った。元父のことだ。私たちの家族の間では、「おじさん」の公称が定着した。
おじさんも、真面目に働いているのか、会社がブラックなのか、朝早く家を出て、夜遅く帰ってくる。私たちと時間帯が合わないので、普通に生活しているだけなのにほぼ接点がない。休みの日にはぐったり寝てるそうだ。
あのおじさんが、そんな生活が送れていることにびっくりしているのは、私たちの家族側の誰もが思うところだ。初めは夜遅いと聞いて、また他所のいい人のところに通っているのかと思っていた。
「有希子さんが厳しく躾けてるから」
椎ちゃんがいう。
「そんなこと言わないで、みんな本気にするでしょ。」
有希子さんが真っ赤になって否定する。母とは違う方向感だが美人だ。
男はよりどりみどりではないかと思うが、事故で死んだ元夫との間の一人息子と長らく二人で暮らしてきた。
おじさんの生活を見かねて、一緒に暮らす提案をしたのは有希子さんの方からと聞いている。母に未練タラタラのおじさんも、有希子さんの前ではそんなことはオクビにも出さないらしい。以前、妹がなぜ結婚しないのか聞いていたが、『めんどくさいじゃない。』と言う回答だった。私たちが隣に住むことを『男たちに内緒にしておこう。』といいだしたのも、有希子さんだ。『多分、気づかないから』と言うことらしい。
そうはいっても、もう半年近くになる。流石に、そろそろ気づくだろうと思っているのだが、いまだにそのそぶりがない。本日の女子会で今後の方針を決めるのは、目的の一つだ。
「うちのはともかく、オタクの旦那さんには説明がいるかと心配してたんだけど。」
有希子さんがいう。
「写真も見せてないし、わからないと思う。バレたところでやましいところもないし。」
母がいう。
「最初は焦ったけど、今となってはわざわざゆうほどのことでもない気もしてきて。」
無関心というやつだ。一番タチが悪い。切り替えたら、元には戻らないのが、女のサガかもしれない。
結局、会議は三時間にも及び、結論も出ないまま『当分はそっとしときましょ。』ということになった。
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