第3話 報告

車の時計は8:15だった。

外気温は、5℃となっている。寒い。

凍えながら、玄関のドアを開けた。

さて、結婚の話をどう切り出そうか。とりあえず、母に話して、それから明日にでも親父に話すか。などと考えつつ、玄関をくぐった。


いつもなら、焼酎の一杯でも開けて、うとうとしている頃の親父が起きている。

母と何やら言い争っているようだ。

「タナベさんは長すぎるの。だからあんなことになった。」

3軒隣のタナベさんは自治会長を10年以上勤め上げている。何かあったとは聞いてないが、何があったのだろう。

「あいつらは取ったものをあえすと言うことを知らない。タナベもキリはないあれこれやって結局何にもなってない。」

横領か何かか。自治会で扱う金なんて、高が知れてる。タナベさんも馬鹿なことをしたものだ。しかし、そんなにお金に困っているようには見えなかったが。こんな夜中に、高齢の2人をここまで熱くさせるとは、いったい何をしたのだろう。

私が、言葉を発しようとしたタイミングで、父が大きな声を出す。

「中国も同じだ、共産主義というものは」

うん?タナベさんが共産党員だと言う話は聞いたことがない。たしか自民党の選挙応援をしすぎて問題になっていた。

「権力の座に、長く居座るといけないっといっているだけでしょ。大きな声をださないで。」

何を話しているんだ。

「今回に戦争だって、プーチンさんが長く居座ってるから始めたんでしょ。」

何をいってるかわからない。が、ソ連のウクライナ侵攻が何か関係しているのか。


そこでふと繋がった。安部元首相とプーチン大統領の話をしているらしいと。壮大な夫婦喧嘩なんだと。高齢夫婦の喧嘩とは思えない。何がしたいのだ。ここで結論が出たとして、一体何が変わると言うのだ。帰ってきた一人息子に食事の一つでも出したほうがよっぽど社会のために貢献している。


議論は、まだ続くがもう頭に入ってこない。風呂に入り、自分で食事を準備して食べ終わった頃ようやく落ち着きを取り戻した食卓で、発言する機会が与えられた。


この日決まったことは三つ。一つ、家で政治の話はしない。 二つ、仮にも国家元首をさん付でだけで呼ばない。 三つ、息子が結婚することを了承する。以上だ。

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