カレナと、ハーブティー ー ⑥
――コンコンコン。
「失礼します」
カレナと一緒に、アルミナス様の部屋までやってきた。
アルミナス様は机に向かって、黙々と作業をされていた。
「旦那様、お仕事の調子はいかがでしょうか? 体調が直ったばかりだと思うので、あまり無理はなさらずに」
「ありがとう」
アルミナス様は、机に向かったまま答えた。
「ティーを入れましたので、是非お召し上がりくださいませ」
私のその一言に、アルミナス様はようやっと顔を上げてこちらを向いた。
そして、嬉しそうな顔をした。
「分かった、すぐに行こう」
その返事をもらうと、部屋を出て食卓へと向かった。
アルミナス様が来るまでの間にティーの準備を済ませてしまう。
アルミナス様の分、私の分、カレナの分。
そうしていると、思ったよりも早くアルミナス様がやってきて、席へと着いた。
「これは、君が入れてくれたのか」
「はい。私とカレナと、妖精さんが入れました」
カレナと妖精さんは、アルミナス様に頭を下げて、かしこまっている。
アルミナス様って、そんなに気を遣う人なのかな?
せっかくなので、カレナも妖精さんも合わせてティータイムとしたい。
私から言えば、この子達と一緒にティータイムは迎えられるのかしら……。
「せっかくなので、この子も一緒にお飲みしても良いでしょうか?」
「君がそうしたいというなら、構わない」
カレナと妖精さんの顔を見ると、二人とも嬉しそうにしていた。
「そうしたら、二人とも私の隣に来て下さい」
そう言って席へと着いた。
長い机で、旦那様は相変わらず遠いけれど、カレナと妖精さんは私の隣にいる。
「お茶はみんなで飲んだ方が美味しいです。ふふ」
妖精さんがふわふわと浮かぶと、どこからか小さな木の実を持ってきてくれた。
私の前へと置いてくれた。
「こういうのもあると、良いでしょう?」
「ありがとうございます」
旦那様から見ると、私側が少し華やかに見えるのだろう。
「君の周りは、いつも楽しそうだで良いな」
「旦那様もそのうちの一人ですわ」
「僕が見込んだだけのことはある」
緩やかに流れている午後の時間。
ティーを飲んでいる間だけは、邪魔されない憩いの空間。
「これ美味しいです。ありがとう妖精さん」
カレナは、飲んでいいと言われたお茶だけをかしこまって飲んでいた。
「カレナちゃん、こちらも食べてくださいませ。遠慮はいりません。ティータイムですもの」
そう言っていると、アルミナス様が口を開いた。
「君たちを見ると、なんだか僕が子供の頃を思い出すな」
「こういう食事って、昔はあったのですか?」
「僕が小さいころ、母がいた時はよくあったよ。母は君に似ているかもしれない。気さくな人でいつも周りには楽しそうにする人が集まっていた」
なにやら昔話のようにするので、私は恐る恐る聞いてみた。
「今はお屋敷にいらっしゃらないようですが……。お母様はどうかされたのでしょうか?」
優しく微笑んで答えてくれた。
「大丈夫、神妙にならなくても。少し公務で家を離れることが多いだけさ」
私は、ほっと一息ついた。
「お忙しいという事でしたので。それであれば、今度お会いしてみたいです」
「今度家に帰ってきたときには、是非とも」
どんな人なのか楽しみです。
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