カレナと、ハーブティー ー ⑤
妖精さんに許されたので、葉っぱをせっせと摘んでくと、興味深々なカレナが聞いてくる。
「葉っぱを摘んで、次はどうするの?」
「キッチンで教えてあげるね」
そう言って、私とカレナはキッチンへと戻ろうとすると、妖精さんが話しかけてきた。
「私も興味があるんでついて行かせてください」
「かまいませんよ。大勢の方が楽しいですからね」
◆
キッチンへ帰ると、準備を始める。
「この葉っぱを一度洗って、熱で乾燥させるんです」
「へぇー」
取ってきた葉っぱを、ボールに入れた。
「次はこれを洗います」
水を出そうとしたが、全然出てこなかった。
私の家のとは少し違うようで使い方が分からなく戸惑っていると、カレナが教えてくれた。
「これに手を触れれば、水が出てくるよ」
水魔法が掛けられているようで、その術韻に触れると水が出始めた。
「私の家には無かった設備みたいです」
今度は私が術韻に触れると、水が止まった。
精霊の力が籠っているのかしら?
「こちら、とても便利ですね」
「ここにはなんでも揃っているからね精霊界でも選りすぐりのキッチンだよ!」
カレナは、胸を突き出して「えっへん」と言いたげだった。
そんなカレナの頭を撫でてあげた。
もう一度術韻に触れて水を出す。
冷たくて気持ちの良い水。
「これは、飲み水になるのかしら?」
「もちろん!」
カレナから良い返事がもらえたので、鍋に水を貯めた。
「そうしたら、これをお湯で沸かしておきましょ」
「これに葉っぱ入れるの?」
「これは、お茶を注ぐ時用のお湯です。葉っぱの方は別に処理をします」
ボールの中で葉を洗ったら、ボールの水を捨てる。
「葉っぱは洗ったら、少し温めながら乾燥させるのです。いつもは火であぶりながらやるんだけれども、そんなものあるのかしら?」
カレナに尋ねると、難しい顔をした。
そういう設備は、このキッチンには無いのかしら……。
どうしましょう……。
「それであれば、私に任せて。火の魔法くらい使えるよ」
一緒についてきていた妖精さんが、手から小さな火を出していた。
「まぁ。ありがとうございます。燃やさないように気をつけながら、水分を抜いていくんです」
「上手いこと乾燥させればいいんだろ?」
妖精さんの手から出した火を少しずつ小さくしていく。
小さな火を出してくれる。
暖かい。優しい火。
「とても良い火加減です」
妖精さんが出した火に向けて、葉っぱを振って乾燥させていく。
段々と葉っぱの水分が抜けてふにゃふにゃに曲がり出した。
「なんだこれ! 踊っているみたいで楽しい」
カレナがウキウキと踊り出した。
「ふふふ。これなら、カレナちゃんでもできそうね。一緒にやってみる?」
私がそう言うと、カレナはうんと頷いた。
妖精さんは、もう一つの手からも火を出してくれた。
カレナの方は、更に小さく優しい火であった。
私とカレナは、持ってきた葉っぱを次々と乾燥させていった。
二人でやると意外と早く終わってしまった。
「そうしたらどうすの?」
「今度は、これを手でつぶしていくの」
「なるほど?」
カレナは分かってはいないようだった。
こういうところ、本当に妹みたいで可愛いです。
「また、私がお手本をするから、カレナちゃんもやってみて?」
「はい!」
ふふ。素直な良い子。
すりつぶした葉っぱは、小さな布袋に入れていった。
「そうしましたら、これを湯の中に入れます」
袋を湯に入れると、段々と色が変わってきた。
「すごい! 色が変わるよ! ミリエル様って魔法使えるの?」
「そういうわけじゃないのよ、魔法みたいだけど、これがお茶作りなの」
匂いも香ってきた。
「これで完成です」
「そうしたら、皆様の飲む分をコップに分けましょう!」
カレナがノリノリでコップに分けようとするが、少し聞いてみた。
「ここで飲んでも良いのですが、お食事の時のテーブルは使えるのかしら?」
「うーん。旦那様の休憩タイムなら。良いかもしれないです」
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