カレナと、ハーブティー ー ③

 カレナが整えたベットに腰かけて、少しくつろいでいた。

 私は、特に荷物を持ってきていなかったので、荷解きをするなどは必要が無かった。

 ボーっと窓の外を眺める。


 そもそも、持ってくるような荷物なんて無いけれど、衣服くらいは持ってくれば良かったな。


 ――コンコン。



 ドアが開かれると、カレナであった。


「そろそろ、昼食の時間になります、下へ行きましょ」

「私はあなた様を何とお呼びすれば、良いでしょうか……」


「ミリエルで良いですわ。カレナちゃん」


 相変わらずムスッとした顔をしている。


「私の呼び方は、『ちゃん』付けなのですか?」

「可愛いでしょ?」


 私が笑いかけると、カレナはにやけるのをこらえながら答える。


「まぁ、悪くは無いです」


 ふふ。

 可愛い子が私のメイドさんで良かった。


 カレナに連れられて、食卓へと行くと長いテーブルの端に料理が用意されていた。

 片方の端には、旦那様の分。

 もう片方の端に私の分。


 メイドさんたちは、その横で立って見ていた。


「あなたの席はココです」


 カレナはそう言って案内してくれた。

 メイドさんたちが並んでいるのが、不思議だったので聞いてみた。


「皆さんは食事なさらないのですか?」


 カレナは私の問いかけに反応せず、黙って他のメイドさんの列に並んでしまった。

 カレナの代わりに、テーブルの端の席に着いているアルミナス様が答えてくれた。


「従者達は、別で食事なっているんだ」


 私は、食べるときはいつも動物たちと一緒であった。

 やはり納得が出来ずに、アルミナス様へ聞いてみる。


「それって、おかしくありませんか? 一緒にお食べしたら良いのに」


 アルミナス様は不思議そうな顔をした。


「僕が幼いころから、そういう決まりだからな……」

「せっかく皆さんいるのに、大勢で食べる方が美味しいですよ」


 私がそう言うと、家に着いた時に一目散に出迎えてくれた背の高いメイドさんが一歩前に出た。


「あなたは、何もわかっておりません。従者とはそういうものです。口を出さないでください」


 そう言うだけ言って、またメイドさんたちの列へと戻った。


 その後は、私とアルミナス様はもくもくと食事をとった。



 美味しい食事だけれども、一人で食べる時と変わらなくて。

 なんだか寂しい気持ちが込み上げてきた。


 アルミナス様は先に食べ終わると、サッと部屋へと帰られてしまった。

 料理についての感想を一言二言喋ったが、食事中はほとんどが無言であった。


 森の中では、食事の時や紅茶を飲むときでも動物たちとおしゃべりをしていたのに。

 こんなのって違う気がする。

 アルミナス様が席を外したあとは、一人で食べる。


「カレナちゃん、一緒にどうですか?」


 カレナは私の方をちらっと見たけれど、元の通りまっすぐ前を見る姿勢へと戻った。


 メイドのみんなは、私が無言で待っているのであった。

 どうすることもできない。


 そのあと、何を言ってもカレナちゃん含め、メイドさんたちは聞いてくれなかった。


 食事を食べ終えたので席を立つと、メイドさんたちが片づけを始めてくれた。

 片づけを始めるメイドさん達に向かって、聞いてみる。


「せめて、食後のお茶でも振る舞えないでしょうか? 私は紅茶を入れたいです」

「それはわたくし達がします」


 先ほど、私の言葉に意見した背の高い人が、メイド長なのだろう。

 私の問いかけに答えてくれる。


 メイドさん達に敵対するつもりは無いのだけれども、提案をしてみた。


「アルミナス様は、私の入れる紅茶が飲みたいとこの屋敷に連れてきてくださいました。なので私自身が入れる必要があると思うのです」


 私の言葉に、メイド長は言い返すことができず言葉に詰まっていた。


 アルミナス様って偉大ですね。

 ここを上手く突いていきましょ。


「アルミナス様のために働くのも私の使命。お手伝いをお願いしたいです。私の補佐になって下さいますか? カレナちゃん?」


 私が名指しすると、カレナはハッとした顔をした。

 そうして、メイド長の顔色を窺っている。


 メイド長もしぶしぶ納得したようであった。

「わかりました。そういうことであれば仕方ないです」


 許可が下りたのでカレナにニコって笑いかけると、カレナもメイド長に見えないように、ニコって笑って返してくれた。

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