カレナと、ハーブティー ー ②

「ご主人様に言われたので、あなたのお世話をするのです」


 そう言うカレナに対して、礼をする。


 カレナは、部屋の中を歩き回って、家具を拭いて回った。

 私は、その様子を眺めていた。


 とても綺麗な部屋。ベッドの装飾も細かくて。

 窓もこんなに大きくて。

 手際よくカレナは拭いていった。



「私、人と触れ合うことが無かったんですけども、この世界には優しい人が沢山いるのですね」


 カレナが綺麗に拭いた後を触ってみる。

 綺麗なだけじゃなくて、触り心地もすべすべしていて気持ち良かった。


 何でできているのでしょうね。

 そう思って触っていると、カレナは廊下から白い塊を持ってきた。


「うんしょ、うんしょ」


 シーツを持ってきてくれたようで、ベッドメイキングをし始めた。


「私が、やりますからね」


 そう言って、一度ベッドの端にシーツを置いた。


 今付けられているシーツをはがそうと、端から引っ張っていくがなかなか取れない。

 カレナは気まずいのか、ちらちらとこちらを見てくる。


「いつもはちゃんとできてますよ!人に見られるとちょっと緊張するんです!」


 ベッドメイキング。

 私もシーツを替えるくらいはできる。


 見ているだけだと、なんだか可愛そうに思えてきたので、カレナが持っているのとは反対側のシーツの端を持ってあげた。

 少しつまんで、シーツを外してあげる。


 そうすると、上手い具合にメイドさんはシーツを引っ張り剥がすことができるようになった。


「ほら! 上手くできましたよ! 見てましたか!」


 私が手伝っていたことに、カレナは気づいていないようだった。


「上手にできましたね」

「子ども扱いしないで下さい! 私だって一人前なんです!」


 今度は、カレナは新しいシーツを宙にふわっと広げた。

 ふわっと全体に広がったが、手を引き過ぎたのか、カレナが持っている方へとシーツが集まる。

 こちらを見て、威嚇するように言う。


「……別に失敗なんてしてないですからね!」


 カレナはもう一度やるが、結果は同じであった。

 三回目をやろうとするが、私は制止した。


「せっかくなので、私にも手伝わせてくださいませんか?」


 睨んでいた顔が少しだけ緩むが、まだ警戒はしているようであった。


「どうしてもっていうなら、良いですよ」


 私には家族がいないのですが、もし妹がいるとしたらこんな感じなのかもしれませんね。

 可愛いけれども、もう少し素直にしてもらえると嬉しいんだけどな。


「手伝わせてくれて、ありがとうございます。嬉しいです」


 シーツの端をもって一緒に広げる。


 柔らかな白いシーツが、ふわっと空に舞う。

 そして、シーツが広がったままベッドへと吸い寄せられる。


 そうすると、カレナの顔が見えた。

 少しだけ嬉しそうに笑っている顔だった。


「あ、ありがとうございます。上手くできました」

「どういたしまして」


 端の方からマットの下にシーツを入れていく。

 私側の方は自分で入れた。

 ベッドメイキングも、誰かと一緒にやるって楽しいな。


「カレナ、ありがとうございます」


 カレナは少し笑ったが、その顔を頑張って隠そうとした。


「いえ、これが私の仕事です」


 その後、カレナは枕のカバーも変えて、布団も整えた。

 カレナはしばらく強がっていたのだが、すべての仕事を終えたようで少し微笑んで優しい顔になった。


「あの……、手伝ってくれてありがとうございました」


 そう言ってお辞儀をすると、カレナは部屋を後にした。


 ……可愛いメイドさんだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る