アルミナスと、森の紅茶 ー ②
大きな木のふもと。
人里離れた森の中。
私は一人で暮らしている。
エルフと人間の間に生まれた子。
エルフの血が流れているため、人とは関われない。
またエルフとも関われずに、一人で暮らす。
今は、精霊様は私のベッドで寝ています。
昨日は夜遅くまで看病をしていて。
小さな森の動物達も一緒に来てくれました。
「皆さん、ありがとうございます。何も無いですけどもお茶くらい入れますね」
「ありがとう! ミリエルさんの入れるお茶ってとっても美味しいんだよね」
小さなキッチン。
火の魔法が込められた石の上に、お鍋を置く。
川から汲んできた水を入れて、沸騰させていく。
森から摘んできた葉から作った、茶葉をビンから取り出す。
合わせて、別のビンからも乾燥した果物を取り出す。
その二つをあらためて手でパラパラとすりつぶして茶こしへと入れる。
本日のフレーバーは、森の果実。
リスの皆さんが好きなものから作る。
それと、隠し味。
沸いたお湯をティーポットへと入れていく。
透き通って濁りのない湯が、みるみるうちに紅色へと変わっていく。
果物の香りが部屋の中に広がる。
「良い匂いー」
「私たちの好きな実の匂いー」
ふふ。喜んでもらえそう。
今日も美味しそうにできました。
リスさん達が飲めるように、小さな器に入れていく。
注いだそばから飲もうとした。
「まだ、熱いから気を付けてくださいませ。冷めるまでは匂いを楽しんで下さいな」
リスさん達は、うっとりしながら匂いを嗅いでいる。
そんなに楽しみにしてくれるなんて、嬉しい。
その時、精霊様が動いた。
「……う、う、この匂いは?」
私は、急いで駆け寄った。
「気づかれましたか? お怪我は大丈夫でしょうか?」
「……ここは、どこだ。君は」
「私はミリエルというものです。この森に住んでいるものでございます」
「僕は、森の中にいたと思ったが、どうして」
精霊様へ昨日の経緯を説明をした。
精霊様は、じっくりと私の話を聞いてくれて、頷いてくれた。
「ありがとう。危ないところを助けて頂いた」
「そんなにかしこまらず。せっかくなので、入れたての紅茶でも飲んでくださいませ」
ゆっくりと紅茶を飲むと、精霊様の顔色は少し良くなったようだった。
「……美味しい」
ようやっと、精霊様の笑う顔が見れた。
「最近、ずっとあった頭痛も無くなった気がする。こんな美味しいものは初めてだ……」
そう言うと、何かを決心したように、椅子から立ち上がったかと思うと、その場で片膝を立ててひざまずいた。
「あなたが良ければ、どうか私の屋敷へと来てもらえないだろうか? 是非とも、あなたを私の屋敷に住まわせたい」
そう言って、私の手を取った。
屋敷に住むとは、この家を出て行くということ。
この家に未練が無いとは言えない。
「こんなところで、一人で暮らしていて、大変だろう。不自由はさせない。屋敷では、君の好きにしていい。どうか」
人に親切にされたときは、素直に従う。
私が母に教えてもらった数少ないこと。
朝の陽ざしがキラキラと輝いている。
窓から、気持ちの良い風が吹いてきた。
「いけいけ!」
リスさん達が何やら応援してくれているようだった。
「……わかりました。私をあなたの家に住まわせてください」
「良かった。ありがとう」
自己紹介をしていなかったね。
緑色の瞳でこちらを見つめながら、名前を告げた。
「アルミナス・ブラントというんだ」
リス達が驚いていた。
「えええ! あなた、精霊界の王族のお名前ですよ」
「そうだ。なのであらためて自己紹介をさせてもらった。私は第三王子のアルミナス」
「私は世間の事は何も知らないですけれども、そういうものは関係ありません。お礼をしてくれる、そんな優しい心を持っておられる方であれば、それに答えなさいというのがお母の教えです。アルミナス様の屋敷へ連れて行って下さいませ」
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