ファミリー・ティー

米太郎

第一章 ファミリー・ティー

アルミナスと、森の紅茶

アルミナスと、森の紅茶 ー ①

 人間は踏み入れないような森の奥。

 生えている木々はとても高く茂っている。

 木と木の間隔は空いている。木漏れ日が差しこんでいる。


 その光を頼りに、食材を集めていく。

 赤い実。地面に敷き詰められた落ち葉によって高い木の上から落ちて来ても、傷つかずに落ちている。

 それを拾って、片方の手に持っているカゴに入れていく。


 木々の根付近に生えている植物も、食用になる。

 命を育んでくれる自然に感謝をしてをして、一人で食べきれる少量だけをもらう。

 いつもいつも、ありがとうございます。



 こういう探索ができるのも、日の光が差し込む日中だけ。

 夜になればこの辺りは獣がうろついていて危ないのだ。

 取り過ぎないように気をつけながら、なるべく急いで食材を集める。



 そうしていると、小さい動物たちが木の実を分けてくれたりする。

 尻尾が大きくて、ちょこちょこ走り回る小動物。


「これ、あげるよ」

「いつもありがとうございます」


 笑いかけると、笑い返してくれる。


「オイラも、これあげる」

「私のも受け取って」


 いつも少量だけにしているのに、気づけば手持ちのカゴが食材で一杯になってしまいます。


「このくらいで十分です。いつもありがとうね」

「お安い御用だよ! いつでも来てね!」


 動物たちに手を振って別れた。

 こちらが見えなくなるまで、ずっと私のことを見送ってくれる。


 私のことを助けてくれる優しい森。

 私はいつも、森に生かされているって実感する。

 今度、あの子達にお礼をあげなきゃな。


 見送る子達が見えなくなってしばらく歩いていると、見慣れないものが落ちていた。

 キラキラと輝く星型のブローチのようなもの。


 その先にも、何か布のような物。

 何かおかしいと思いながら、拾い集めて先を追っていくと、そこには人が倒れていた。

 私は、とっさに駆け寄っていた。


「大丈夫でしょうか?」


 声をかけてみたが、反応は無かった。


「えっと……。どうしよう……」


 倒れている人は、怪我をしているように見える。

 手当をしようにも、処置できる道具も無いし。

 家に帰ってここまで戻ってくるとなると、夜になってしまう。

 夜になると、獣が辺りをうろついてしまう。


 困っていると、森の奥から小さい動物たちが来てくれた。


「人が倒れてるの、助けて上げなきゃこの人死んでしまうわ」


「これ、人間族じゃないね」

「妖精の国の人が迷い込んだみたい」

「妖精って、関わると厄介」


 小さい子達が助けるのをやめようとしていた。

 私はつい大声を出してしまった。


「目の前に困っている人がいて、助けないなんて! 私は絶対に見殺しにはしたくありません」


 私の声に、小さい動物たちは驚いたのか散ってしまった。


 やってしまいました。

 私がどうにかするしかない。


 とはいっても、私には力は無い。

 エルフの血が流れているせいもある。


 倒れている人の体を持ち上げようとしても、体の下に手を入れることすら難しい。

 やはりどうしようもない。

 せめて気を戻して下されば。


「起きて下さいませ。精霊様」


 そう言って呼びかけを続けているが、一向に目を覚まさなかった。

 段々と日は落ちてきて、夕焼け色に染まる森。


 そろそろ獣が起き出す時間。


 このままだと、私の命も危ない。

 だけど、この殿方をこのままにしておくわけには。


「ごめん、遅くなった!」


 そういって、小さい動物達が戻ってきた。


「僕たちの力じゃどうしようもできないから、仲間を呼んできたよ!」


 少し大きめの狐とクマがやってきた。

 それも、何匹も。


「もう夜は近いから、君も一緒に送って行くよ」


 狐に乗って夜になろうとする辺りを駆け抜けていった。

 どうか、無事でいてくださいませ。


 精霊様……。

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