第8話 我、遠出の準備に忙しい
「うむ。我が呼び出しに応じてくれて嬉しく思うぞ、我はこれから出掛ける。従者として我と共に来るのだ」
「はっ! 仰せのままに」
「ほんっとにスカイクイーンじゃないですか。すげぇあんな適当な詠唱で……完成度たっけーなおい」
タイタンがゴスゴスと鉱石の手で拍手をした。
「貴方は?」
魔王の力により創り出された者が、光の無い目でタイタンを見る。
「俺は元四天王のタイタンっつーんだ。よろしくな! えーっと……」
「ん? あー……姿はスカイクイーンだけどスカイクイーンじゃないからなぁ……じゃあフレイで」
お代わりの紅茶を継ぎつつ、フレイを見もせずに魔王が言い放った。
その途端フレイの瞳に光が灯る。
「つーわけだ、よろしくなフレイさんよ!」
「畏まりました、四天王のタイタン様」
流れるような動作で立ち上がったフレイはタイタンへ向き直り、ぺこりとお辞儀をした。
こうして魔王に二人目の部下が出来たのであった。
「んじゃ行って来るわー」
「気をつけてくださいね魔王様」
「おう。留守を頼むぞ。って言ってもここを脅かす生命体がいればの話なんだがね」
「アリンコ一匹くらいは見つけたいですねぇ」
門の外に立つ魔王とその横で静かに立つフレイ。
両名を見送るため、タイタンは門の内側で手を軽く振る。
今回は魔王城の裏の大陸、勇者が誕生したとされる大地グロウステイト。
緑豊かな大地であり、むしろ緑しかないど田舎の大陸である。
そんなど田舎からなぜ勇者が誕生したのかは謎だが、緑や大地と共にすくすくと育った健康優良児だったからじゃないか、と魔王は勝手に結論付けていた。
アルベリオンがボロボロになっていた事を考えるとあまり期待は出来ないが、それでも行かないよりはマシだろうと魔王は思う。
「よいしょっと。おいタイタン、なんで我がこんな荷物を持たねばならんのだ?」
魔王の背中には、子供が一人入りそうなほどの大きさをしたバックパックが括り付けられていた。
鬱陶しそうにモゾモゾする魔王へタイタンが答えた。
「現地で必要な物が手元に無いと困るかと思いましてね。俺の方でちょっと必要そうな物資を詰めておきました」
「ほーん。よく分からんが、うむ。よくやってくれた。褒めてつかわす」
「ははっ、ありがたきお言葉」
「おやつは入ってる?」
「もちろんです」
「ダークバナナは?」
「ダークバナナはおやつに入りませんので入れておりません。と言うより在庫がありません」
「えぇー! 我バナナ好きなんだけどなぁ……無いもんはしゃーなしかぁ、ちぇっ……」
背後に落雷でも落ちたかのようなリアクションをした後、拗ねたように足元の小石を蹴る魔王。
魔王の力をダイレクトに浴びた小石はそこから一ミリも動く事なく、霧のように掻き消えてしまった。
それを見たタイタンとフレイの顔が、一気に恐怖に染まったのは言うまでもない。
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